太極図説

太極図説（たいきょくずせつ）

『太極図説』は、北宋時代の儒学者、周敦頤（しゅうとんい、1017年 - 1073年）によって1070年に著された書物です。全1巻で構成され、『易経』の繋辞上伝にある「易に太極あり、これ両儀を生じ、両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず」という一節に基づき、陰陽思想や五行思想と儒教思想を結びつけて、宇宙と人間の根本原理を説いています。

内容

わずか250字程度の短い文章でありながら、その内容は多岐にわたります。太極図という図像を用いて、森羅万象の生成発展の過程を説明し、人間の地位や道徳の根本を論じています。従来の儒教には見られなかった宇宙観を提示した点が画期的でした。

歴史

当初は、周敦頤の別の著作『通書』の末尾に添付される形で存在し、程頤の弟子たちの間で細々と伝えられていました。しかし、南宋時代の朱熹（しゅき）が本書の重要性を指摘し、『通書』から独立させました。朱熹は、本書のために詳細な解釈を施した『太極図解』と『太極図説解』を著し、『太極図説』の普及に尽力しました。

朱熹の尽力により、朱子学が隆盛を極めるにつれて、『太極図説』は中国王朝時代の主要な著作の一つとして、清朝が滅亡するまでの約1000年もの間、重要な地位を占め続けました。

テキスト

現在、様々なテキストが存在しますが、いずれも朱熹の『太極図解』と『太極図説解』を添付したものが一般的です。明代には、曹端（そうたん）が『太極図説述解』1巻を著しています。

思想的影響

『太極図説』は、その後の中国思想に大きな影響を与えました。特に、朱子学においては、宇宙の根本原理を説明する重要なテキストとして位置づけられ、その思想体系の根幹をなすものとなりました。本書は、儒教、道教、仏教といった様々な思想が融合した宋学の代表的な著作として、中国思想史において重要な位置を占めています。

日本への影響

江戸時代の日本にも伝えられ、儒学者を中心に広く読まれました。日本の思想界にも影響を与え、特に朱子学系の学者たちに重視されました。

『太極図説』は、宇宙の生成から人間の道徳までを包括的に論じた書として、中国思想史における重要な古典の一つです。

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