太極宮

太極宮の概要

太極宮（たいきょくきゅう）は、唐代の長安城に存在した宮殿で、具体的には隋の大興城の北部中央に位置していました。この宮殿は、隋唐初の約100年間、皇帝の住居であり、政務を行う重要な宮殿でした。663年に高宗が大明宮へ政権を移してからは、太極宮は政治的中心地としての機能を失いましたが、王権儀礼においては依然として重要な位置を占めていました。太極宮は大明宮、興慶宮と並び長安の「三大内」として知られ、西内とも呼ばれています。

物理的な構造

太極宮の敷地は、南北1942m、東西1288mの方形で、周囲には他の重要な宮殿や施設が接しています。東隣には皇太子が居住する東宮があり、西側には皇妃や宮女が住む掖庭宮があります。また、南には官庁街である皇城が広がり、北には禁苑（大興苑）が広がっていました。

南正面には承天門という外朝があり、その北側には太極殿（中朝）、両儀殿（内朝）、甘露殿などが軸に沿って配置されています。この建物は左右対称であり、構造的に均衡の取れたデザインになっています。太極殿は宮殿の中核となる正殿であり、ここでは皇太子や群臣の朝賀、納后の儀礼、冊命の儀礼など、重要な王権儀礼が執り行われました。

儀式と文化的な重要性

太極宮では、皇帝の即位や大葬といった重要な儀式が執り行われました。特に、郊祀や太廟などの主要な儀礼もここから始まりました。これにより、太極宮は単に形式的な空間だけでなく、王権の象徴ともなっていました。また、両儀殿は内朝の正殿であり、聴政の場として機能していました。「両儀」という名前は『周易』に由来し、宇宙の始まりと万物の根源である陰陽の概念を反映しています。加えて、甘露殿の名称は、天地の調和を意味し、平和な治世の象徴を表わしています。

後園とその施設

太極宮の敷地の北端には園林が設けられており、ここは「後園」と呼ばれています。この後園は中軸線を持たず、建物が散在し、4つの池（四海）がそれぞれ方向を象徴しています。初唐時代には、皇帝がこの池で舟遊びを楽しんでいたとされています。その中でも特に凝陰殿は、歴史的に重要な出来事が数多く行われた場所で、例えば、656年に玄奘が翻訳を行ったり、748年の日照りの際には道士が雨を祈願したりしました。

歴史的背景と変遷

太極宮の歴史は深く、北周からの政権奪取に始まる隋の立ち上げに関連しています。文帝は長安を都として選び、その後新都を建設しました。これが大興城と呼ばれ、太極宮はその中心的な宮殿となりました。唐はこの都を受け継ぎつつ、独自の足跡を残しました。「太極宮」という名称が正式に使われ始めたのは705年になってからで、それまでの王朝の変遷に伴うものでした。

663年以降、唐の皇帝たちは徐々に政務を大明宮に移しましたが、王権儀礼においては依然として太極宮が重要な役割を果たしていました。これにより、太極宮は唐代の象徴的な空間として歴史の中での位置を確立しています。

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