太歳

太歳（たいさい）は、古代中国の天文学や暦法において、木星の動きを基準に設定された仮想の惑星です。木星が約12年で天球を一周するのに対し、太歳は鏡像のように反対方向に移動すると考えられていました。

暦法における太歳

木星は天球上を西から東へと約12年かけて一周します。このため、天球を赤道に沿って12等分した十二次を、木星は約1年に1つずつ進んでいくことになります。この木星の十二次における位置を用いて年を表すことが可能でした。しかし、十二次は西から東へと天球を分割したもので、地上の方位を示す十二支（十二辰）とは方向が逆でした。この問題を解決するために、天球上の円軌道に直径を引き、その直径を基準として、木星と線対称の位置にある仮想の星が設定されました。これが太歳です。太歳は東から西へと移動すると考えられていました。

このようにして、「太歳在子（太歳が子にある年）」のように、太歳の十二辰上の位置で年を記述する太歳紀年法が用いられるようになりました。この太歳紀年法は、後に太歳とは直接関係なく、機械的に60年を周期とする干支紀年法へと発展しました。干支紀年法では、十二支の部分が12年周期で巡ります。

太歳の位置を決める直径の位置は、暦法によって異なっています。これは、木星の公転周期が正確には11.862年であるため、木星の天球上の位置が約86年ごとに1次（太歳は1辰）ずれが生じるためです。暦を改める際に、このずれを調整する必要がありました。例えば、漢の時代の三統暦では、このずれを調整するための超辰法が暦法に取り入れられました。

太歳信仰

太歳は、単に暦法上の概念としてだけでなく、神格化され信仰の対象ともなりました。太歳神は、その年の吉凶を司るとされ、人々の生活に大きな影響を与えると信じられていました。この信仰は、道教の神々とも結びつき、現在でも一部地域で信仰が続いています。

太歳信仰の具体的な内容は、地域や時代によって異なりますが、一般的には太歳神を祀ることで、その年の災厄を避け、幸運を招くと考えられていました。太歳の方位を犯すと災いが起こるとも信じられており、建築や引っ越しなど、方位が重要となる際には、特に注意が払われていました。

まとめ

太歳は、古代中国の暦法において重要な役割を果たした仮想の星であり、その概念は暦法だけでなく、信仰にも影響を与えました。木星の動きを基にした太歳の概念は、天文学と密接に関わりながらも、人々の生活や文化に深く根付いていったと言えるでしょう。

参考資料

* ウィキメディア・コモンズには、太歳に関するカテゴリがあります。

もう一度検索