太田一郎

太田一郎について

太田一郎（おおた いちろう）は、1924年5月27日に東京で生まれた、日本の著名な経済学者、歌人、文芸評論家です。帝京大学の元教授としても知られています。

生い立ちと青年期

東京四谷で生まれた太田は、3歳で父親を亡くすという幼少期を過ごしました。その後、第一高等学校に進学し、そこでいいだももや中村稔といった、後に文学の世界で活躍する人物たちと出会います。しかし、1945年の東京大空襲で家を失い、戦後には肺結核を発病。清瀬療養所での療養生活を送ることになります。この療養所では、結城昌治や福永武彦といった、文学の道に進む人々との交流が生まれました。

大学卒業と社会人生活

療養所を退院後、1952年に東京大学経済学部を卒業した太田は、国民金融公庫に入庫します。公庫での仕事と並行して、吉行淳之介らとともに雑誌『世代』に短歌や文芸評論を寄稿するなど、文筆活動も積極的に行いました。国民金融公庫では、調査部長、総務部長、理事といった要職を歴任し、1983年には帝京大学経済学部の教授に就任。1995年に定年退職を迎えるまで、後進の育成に尽力しました。

経済学者としての活動

太田は経済学者として、中小企業に関する研究に力を注ぎました。特に、中小企業の経営や地域経済の振興に関する研究は、その後の政策立案にも大きな影響を与えたとされています。著書には、『人間の顔をもつ小企業 生業的経営のバイオロジー』や『現代の中小企業 その活力と再生』などがあります。これらの著作は、中小企業の現場の実態を踏まえ、経済学的な視点から分析したもので、実務家からも高い評価を得ています。

歌人、文芸評論家としての活動

経済学者としての活動と並行して、太田は歌人、文芸評論家としてもその才能を発揮しました。歌集『墳』、『蝕』、『秋の章』など、多くの歌集を出版しています。また、『定家・迢空・茂吉 定型詩論ノート』や『海暮れて 定型詩論ノート』といった評論集も発表し、短歌や詩に関する深い知識と考察を示しました。斎藤茂吉に関する覚え書を著すなど、近代文学の研究にも貢献しました。歌人としての太田は、自身の人生経験や社会への深い洞察を、短歌という短い形式の中に凝縮させました。

多彩な著作活動

太田一郎は、経済学、短歌、文芸評論と、幅広い分野で多数の著作を残しました。経済学関連では、『企業家精神の生成 中小企業創出のダイナミクス』や共編著『中小企業の知識集約化戦略 大企業に勝つ第三の経営ビジョン』などがあります。歌集としては、『太田一郎歌集』、『花の骸』などがあり、文学評論としては、『うたの風景 古典と現在』などがあります。これらの著作は、太田の多才な才能と深い知識、鋭い洞察力を示しています。

まとめ

太田一郎は、経済学者、歌人、文芸評論家として、日本の社会や文化に多大な貢献をした人物です。その生涯は、経済学と文学という異なる分野で、才能を発揮し続けた、知的で豊かなものでした。彼の著作や活動は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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