太田垣士郎

太田垣士郎の生涯と業績

概要

太田垣士郎（おおたがき しろう）は1894年2月1日、兵庫県城崎町湯島（現在の豊岡市）に生まれる。1940年代から1960年代にかけて、京阪神急行電鉄（後の阪急阪神ホールディングス）や関西電力の社長を務め、特に黒部ダムの建設において重要な役割を果たした実業家である。彼は贈正四位・勲二等が授与されたことでも知られる。

学歴と初期のキャリア

太田垣は第五高等学校と京都帝国大学の経済学部を卒業した後、1920年に日本信託銀行に入行。しかし、5年後の1925年には阪神急行電鉄に転職し、小林一三の下でさまざまな業務を経験する。彼の元で出札係や百貨店の店員として働いたことは、後の経営における基礎を形成した。このような背景は、彼が1946年に京阪神急行電鉄の社長に就任する際に大いに役立った。

関西電力の設立と黒部ダム

1951年に日本発送電が分割されたことで関西電力が誕生し、太田垣は初代社長に就任した。彼は戦後の電力不足に対応すべく、特に水力発電に着目し、大規模な発電所の建設に取り組む。最初に手がけたのが岐阜県の丸山水力発電所であり、当時最大規模の施設だった。このような資金投資は、関西地域の電力事情を改善する鍵となった。

そして、1950年代に迫る電力危機を受けて、彼は黒部ダムの建設を決断する。このプロジェクトは「世紀の難工事」と称され、太田垣は「経営者が十割の自信をもって取りかかる事業は、仕事の範囲に含まれない。七割の成功見込みがあれば、勇気をもって実行すべきだ」と指摘し、難しい状況に挑む姿勢を見せた。この信条は、管理職としての彼の特徴でもあった。

黒部ダムの建設は、彼の後輩である芦原義重の支援のもと進められ、結果として関西電力の基盤を確立する重要な事業となった。このプロジェクトの経緯は、映画『黒部の太陽』で広く知られるようになり、多くの人々に影響を与えた。

先進的な施策

太田垣の経営方針は先進的であり、原子力発電所である美浜発電所の建設にも先鞭をつけるなど、技術革新に対して常に前向きであった。関西電力はその結果、業界の中で経営内容が高く評価される会社となり、その成功は黒部ダムだけでなく、他の多くの施策によるものであった。

地域貢献と晩年

太田垣はまた、地域社会にも貢献しており、故郷の城崎温泉の発展のためにロープウェイの建設を発案し、1963年には城崎ロープウェイが完成した。さらに、関経連会長や電気事業連合会会長など様々な役職を歴任し、広範なネットワークを築いた。

1964年、黒部ダムの完成からわずか一年後、脳軟化症で逝去する。享年70歳。彼の業績は後世に語り継がれ、2002年には豊岡市に彼を顕彰する「太田垣士郎資料館」が設立された。彼の影響は、電力業界だけでなく地域社会にも深く根付いている。

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