太陽の鐘

太陽の鐘

「太陽の鐘」は、芸術家・岡本太郎が手掛けた貴重な梵鐘作品です。高さ約6メートルのモニュメントに、直径約1.2メートル、高さ約2.4メートルの鐘が吊り下げられた、独創的なフォルムが特徴です。岡本太郎が生涯で制作した2つの梵鐘のうちの一つであり、もう一つは名古屋市北区の久国寺にある「歓喜の鐘」です。

歴史

1966年、日本通運によって静岡県伊豆の国市に開園された日通伊豆富士見ランドに設置されました。川崎市岡本太郎美術館の学芸員、大杉浩司氏によれば、この作品には岡本太郎が提唱した「双極主義」の理念が色濃く反映されています。駿河湾と富士山を一望できる高台に設置されることを前提として制作されており、雄大な自然と、それに抗いながら生きる人間の存在という、対立する二つの要素を表現しています。

しかし、1999年に日通伊豆富士見ランドが閉鎖された後、「太陽の鐘」は人目に触れることなく、日本通運によって保管され、「幻の作品」と呼ばれるようになりました。

その後、ほぼ日刊イトイ新聞を主宰する糸井重里氏を通してこの作品の存在を知った「太陽の会」が、前橋市再生のシンボルとして修復と移設を提案しました。

2017年には、前橋市への寄贈が決定しました。前橋市によれば、民間と連携した街づくりを進める市の姿勢に賛同した日本通運からの打診があったとのことです。同年4月21日、前橋市は市議会総務常任委員会において、市内千代田町の広瀬川河畔の市所有地にこの作品を設置することを報告しました。

2017年5月9日には、移設を仲介する「太陽の会」が都内でプロジェクトの概要を発表し、モニュメント部分を修復後、同年10月に広瀬川河畔に移設する予定であることが発表されました。

そして、2018年3月31日、広瀬川河畔にて移設の記念式典が盛大に開催されました。式典中、株式会社ジンズ代表取締役社長の田中仁氏は、「民間のエネルギーと行政のサポートで良い形ができた」と挨拶し、糸井重里氏は「子どもたちが大人になったとき、自慢できるようなものになってほしい」と期待を込めました。

太陽の会とは

「太陽の会」は、群馬県前橋市の地方創生を目指す街づくり支援団体です。前橋市が2016年8月に地域再生プラン「前橋ビジョン」を発表したことを受け、結成されました。2017年現在、前橋市に拠点を置く24の企業で構成されており、会長は株式会社ジンズ代表取締役社長の田中仁氏が務めています。参画する企業は、毎年純利益の1%（ただし下限は100万円）を前橋市の活性化のために寄付しています。

「太陽の鐘」は、岡本太郎の芸術性、企業の社会貢献、そして市民の熱意が結集した、まさに「前橋再生」のシンボルと言えるでしょう。

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