夫のちんぽが入らない

『夫のちんぽが入らない』

『夫のちんぽが入らない』（おっとのちんぽがはいらない）は、作家こだまによる日本のエッセイ作品、およびそれを原作とした漫画や配信ドラマを指します。略称としては「おとちん」とも呼ばれています。

作品の概要と成り立ち

本作は、作者こだま氏自身の実体験に基づいて綴られた私小説です。結婚した夫婦が直面する、性行為におけるデリケートな問題と、そこから派生する子供を持つことへの葛藤を中心に描いています。性生活における特定の困難という、それまであまり表立って語られることの少なかったテーマに真摯に向き合った内容が特徴です。

この作品は、まず2014年5月に開催された同人誌即売会「文学フリマ」で頒布された同人誌「なし水」に、短編エッセイとして掲載されたことから始まります。この同人誌が大きな反響を呼び、大幅な加筆修正を経て、長編作品として刊行される運びとなりました。

2017年1月18日に扶桑社より単行本として出版された際には、作者こだま氏にとって初の単著となりました。その注目度の高さは、刊行からわずか1ヶ月後の2017年2月時点で、発行部数が13万部を突破したことからも伺えます。また、『朝日新聞』に掲載された書籍広告では、「※書名は書店でお確かめください」という異例の但し書きが付記されるほどでした。その後、2018年9月14日には講談社文庫より文庫版も刊行され、文庫版特別収録エッセイ「ちんぽを出してから」が追加されています。

作品は社会的な注目を集め、Yahoo!検索大賞の小説部門では、2017年、2018年と2年連続で受賞するという快挙を成し遂げています。また、音楽グループceroが2014年に発表した楽曲「Orphans」は、同人誌版の本作にインスパイアされたものであることが知られています。さらに、こだま氏自身も、雑誌『クイック・ジャパン』にて「Orphans」というタイトルでエッセイを連載しています。

メディアミックス展開

エッセイの反響を受けて、『夫のちんぽが入らない』は様々なメディアで展開されました。

漫画化

ゴトウユキコの作画により漫画化され、『週刊ヤングマガジン』（講談社）にて、2018年25号から2020年15号にかけて連載されました。単行本は講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉より全5巻が刊行されています。

配信ドラマ化

フジテレビの制作によりドラマ化も実現しました。この配信ドラマは、2019年3月20日よりフジテレビオンデマンド（FOD）およびNetflixにて全10話が配信されています。主人公夫婦役には、オーディションで選ばれた石橋菜津美（渡辺久美子役）と中村蒼（渡辺研一役）がキャスティングされ、尾野真千子ら実力派俳優も出演しています。監督はタナダユキ、脚本は黒沢久子が担当しました。

また、2021年1月11日からはフジテレビ系列で地上波放送も行われました。地上波放送の際、番組表などでは『おとちん』という略称が用いられる場合もありましたが、番組公式サイトのタイトルやURLは原作に準じたものとなっていました。

このように、『夫のちんぽが入らない』は、一つの私的な悩みを起点としながらも、書籍、漫画、ドラマと形を変え、多くの人々に読まれ、視聴される作品へと広がっていきました。デリケートなテーマを扱いつつも、夫婦間の深い愛情や困難に立ち向かう姿を描き、共感を呼んだ点が、現代社会における重要な作品の一つと言えるでしょう。

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