失敗国家

失敗国家とは

失敗国家は、権力の衰退によって国の基本的な構成が維持できなくなり、政府がその役割を果たせない国のことを指します。これには、公共サービスの不提供や法体系の崩壊などが含まれます。具体的には、必要な行政サービス（教育、医療、インフラ整備など）が提供されず、国家としての機能が低下した状態を表します。

国際社会では、このような国をどう定義するかには多様な考え方があるため、一概に「失敗国家」とされる基準が定まっているわけではありません。それぞれの国家が直面する地政学的な問題に応じて、指定されることがあります。このため、国家の状態を測るための指標が重要視されています。

定義と識別方法

アメリカ合衆国のシンクタンクである平和基金会（FFP）は、失敗国家を定義する上でいくつかの重要な要素を挙げています。具体的には、物理的統制や合法的な軍事力の独占の喪失、あるいは集団意思決定を下す権限の侵害、合理的な公共サービスの提供失敗が挙げられています。また、国際社会との接触能力や合法的な権限の確認も重要な側面です。

日本の研究者である喜多悦子氏は、失敗国家を識別する基準として、警察官や兵士の給与が支払われていない国、教師への給与支給が滞っている国を挙げています。これらの指標は、国家の機能不全がどの程度深刻かを測る簡単な方法とされています。

特徴と関係する問題

失敗国家の特徴として、社会的、政治的、経済的な崩壊が挙げられます。国家の名目上の政府が存在していても、腐敗や無能によって国を統治する力を失い、権力の空白が生まれます。この結果、内戦や地区ごとの軍閥化が進み、民衆は治安を保つために独自に自衛団を結成するなどの動きが見られます。

多くの場合、これらの国々では国民生活が深刻に悪化し、治安が崩壊します。失敗国家の政府は、訓練を受けた兵士や警察官すらも賃金未払いや職務放棄をすることが多く、社会的インフラが機能不全に陥ります。その結果、農業生産が低下し、食糧不足や難民問題が発生することが一般的です。さらに、失敗国家は国際的なテロリストの隠れ場所となることも多く、テロリストたちは政府の機能不全を利用してその存続を図ります。

脆弱国家ランキング

平和基金会は、失敗国家を評価するために独自の指標を使っています。これにより、国家の状態を数値化し、ランキングを作成しています。2006年から始まったこの取り組みでは、複数の指標によって国家の脆弱性が評価され、例えば治安や経済状況などの側面が含まれます。

2023年度のランキングでは、最も脆弱な国としてソマリアが名を連ねており、その点数は111.9点です。一方、最も安定した国はノルウェーで、得点は14.5点となっています。これにより、国の安定度や脆弱性について相対的な理解が促進されています。

日本の脆弱性

2023年度の脆弱国家インデックスにおいて、日本は179か国中161位に位置しています。点数は30.5点で、G7諸国の中では4位に該当します。この結果から、日本も一定の脆弱性を抱えていることが示され、特に経済状況や人口構成に課題があることが浮き彫りになっています。

このように、失敗国家という概念は、国家の健全性を評価するための重要な基準として機能しており、国際問題を理解するための視点を提供しています。

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