失権の原理

失権の原理について

失権の原理（しっけんのげんり）は、イギリス統治下のインドで適用されていた政策で、養子を通じた王位の相続を認めず、無嗣の藩王国を併合する手法でした。この政策は、18世紀から19世紀にかけてのインドの植民地化を背景に生まれました。イギリスは、各地の王侯と軍事保護条約を締結し、その結果、王国には一定の自治権が与えられましたが、藩王に嫡子がいない場合には、厳格に無嗣改易を適用しました。

植民地型藩王国の枠組み

イギリスが藩王国を統治する中で、養子の相続を拒否する方針がなぜ選ばれたのかというと、藩王国の管理が複雑であったからです。無嗣改易の措置により、王国が併合されると、藩王国の家臣団や住民が失職し、不満を抱える層が増え、社会的不安を引き起こす懸念がありました。そのため、イギリスは藩王の養子が成人するまで、行政官が直接統治することが一般的でした。

ダルハウジー侯爵と厳格な適用

特にダルハウジー侯爵のもとで、失権の原理は厳しく適用されました。彼は、藩王国を三つのカテゴリーに分類して、それに基づき相続権を否定する権限がイギリスにはあると宣言しました。この方針のもとで、複数の藩王国が併合され、藩王国の失権は急速に進行しました。併合の具体例には、サーターラー藩王国やジャーンシー藩王国などがあり、これによりイギリスが統治する領地は前任者に比べて30%も増加しました。

反発と抗議

この政策に対する反発も見られました。特にジャーンシー藩王国の王妃ラクシュミー・バーイーは、イギリスによる領土の奪取に対して強く反発しました。彼女は王国の併合に異議を唱え、「イギリスは我々の権利を奪っている」と表明しました。年金を受け取っていた他の藩王に対しても失権の原理が適用され、旧マラーター王国の宰相の養子に対する年金支払いが拒否されるなど、影響は広がりました。

1857年のインド大反乱とその後

しかし、1857年にはインド大反乱が発生し、藩王国の住民や王族も反乱に加わりました。特にナーナー・サーヒブが起こした反乱は、イギリス側にとって大きな打撃となり、カーンプルでは多くのイギリス系住民が虐殺されました。この大反乱の後、イギリスは藩王国を自国の支配を強化するための傀儡政権として利用し、徐々に養子による相続の認可を行うようになりました。

結論

失権の原理は、イギリスのインド植民地政策の中で重要な役割を果たした概念であり、その適用により多くの藩王国が併合される結果を引き起こしました。この政策は、イギリスとインドの関係に大きな影響を及ぼし、反乱を引き起こす要因ともなったのです。

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