マラーター王国

マラーター王国：デカン地方の興亡とインド史における足跡

マラーター王国は、17世紀後半から19世紀半ばにかけてインドのデカン地方に存在したヒンドゥー王朝です。その歴史は、卓越した指導者シヴァージーの台頭から始まり、ムガル帝国との激闘、マラーター同盟の形成、そしてイギリスとの戦争を経て、最終的にはイギリス東[[インド会社]]によって解体されるという、劇的な興亡を遂げました。本稿では、マラーター王国の歴史を詳細に考察します。

マラーター勢力の台頭と王国の成立

マラーターは、中世デカン地方で台頭した新興カーストでした。バフマニー朝やその後のデカン・スルターン朝の下で傭兵として活躍し、次第に勢力を拡大していきました。17世紀初頭、ムガル帝国のデカン侵攻の最中、プネーの郷主シャハージー・ボーンスレーの子としてシヴァージーが誕生します。

幼少期から優れた軍事才能を示したシヴァージーは、1640年代後半からムガル帝国や周辺勢力に反抗を開始。大胆な戦略と優れた軍事力でコンカン地方を制圧し、1674年、ラーイガド城で即位式を行い、マラーター王国の建国を宣言しました。これは、デリー・スルターン朝以降、実に3世紀ぶりのヒンドゥー王朝の成立でした。

シヴァージーの死後、息子のサンバージーが王位を継承しますが、ムガル帝国皇帝アウラングゼーブの大規模な南征によって王国は大きな危機に瀕します。アウラングゼーブはビジャープル王国やゴールコンダ王国を滅ぼした後、サンバージーを捕えて処刑。マラーター王国は一時衰退の危機を迎えます。

マラーター王国の危機と復興

サンバージーの死後、ラージャーラーム、シヴァージー2世と王位継承が繰り返される中、マラーター王国はムガル帝国との激しい抗争を続けます。アウラングゼーブの死後、シャーフーが王位に就き、宰相バーラージー・ヴィシュヴァナートの活躍により、王国は復興への道を歩み始めます。

バーラージーの死後、息子のバージー・ラーオが宰相となり、その優れた政治手腕と軍事力で、マラーター王国の版図は大きく拡大します。バージー・ラーオは、ムガル帝国の弱体化を巧みに利用し、デカン地方のみならず、北インドにまで勢力を伸ばしました。

バージー・ラーオの死後、息子のバーラージー・バージー・ラーオが宰相を継承し、マラーター王国は全盛期を迎えました。この時代、マラーター王国は北はデリー近郊、南はカルナータカ地方にまで及ぶ広大な領土を支配するようになり、その勢力は頂点に達します。しかし、この繁栄は長くは続きませんでした。

ドゥッラーニー朝との抗争と王国の衰退

北インドへの勢力拡大は、アフガニスタンのドゥッラーニー朝との衝突を招きました。1761年の第三次パーニーパットの戦いでマラーター同盟軍は大敗を喫し、王国の勢力は大きく後退します。この敗北は、マラーター王国の衰退の始まりでした。

パーニーパットの敗戦後、マラーター王国はニザーム王国やマイソール王国との抗争にも巻き込まれ、内部的な権力闘争も激化します。宰相マーダヴ・ラーオの死後、王国内の混乱はさらに深まり、宰相の権力は家臣へと移っていきました。

イギリスとの戦争と王国の終焉

衰退していくマラーター王国に、イギリス東[[インド会社]]が介入を始めます。イギリスとの間で勃発した第一次、第二次、第三次マラーター戦争の結果、マラーター王国はイギリスの支配下に置かれ、サーターラー藩王国として存続を許されるものの、1849年、最終的に廃絶されました。

マラーター王国は、インドの歴史において重要な役割を果たした王朝でした。その興亡は、インドにおける権力闘争の激しさや、時代の変遷を如実に示しています。シヴァージーから始まり、数々の英雄、宰相、そして王たちが築き上げたマラーター王国の歴史は、これからも人々の記憶に刻まれることでしょう。

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