奈良本辰也

奈良本辰也の生涯と学問

奈良本辰也は、1913年12月11日に山口県で生まれ、2001年3月22日にその生涯を閉じました。彼は、日本の歴史学者として、特に中世史や幕末史、そして自身の郷里である長州藩に関する研究で著名です。立命館大学では教授として長年教鞭を執り、また部落問題研究所の所長も兼任しました。

生い立ちと学問への道

奈良本は、旧制岩国中学校を経て、旧制松山高等学校を卒業後、京都帝国大学文学部国史学科に進学しました。そこで西田直二郎に師事し、1938年に卒業。卒業論文では『近世に於ける市民的世界観への通路』をテーマに、思想史における商業資本の問題を深く掘り下げました。

教員としての活動

卒業後、奈良本は兵庫県立豊岡中学校の教諭として教壇に立ちました。教え子の中には、作家の山田風太郎もいました。その後、京都市史編纂事業にも携わるなど、教育者として、また研究者としてのキャリアをスタートさせました。

立命館大学での活躍

1945年、奈良本は立命館大学に着任し、専任講師から助教授、そして教授へと昇進しました。文学部長も務め、部落問題研究所の所長としても活躍しました。大学の花形教授として学生からの人気も高かった一方で、1969年には大学闘争の激化を背景に大学を辞任しています。大学を去った後も、反共産党的な立場を明確にしながら、著述や講演活動に精力的でした。大学のアカデミズムの閉鎖性を批判し、私塾的な「奈良本研究室」を主宰し、後進の指導にも力を注ぎました。また、京都イングリッシュセンターの学院長や、朝田教育財団の理事、学校法人瓜生山学園の理事なども歴任しました。

研究内容と業績

奈良本の専門は日本近世史であり、思想史や明治維新史の研究に力を注ぎました。1960年代以降は、一般向けの歴史読物の執筆にも取り組み、戦国時代に関する著作を多く発表しました。『日本歴史の旅 戦国コース』などの著作は、戦国史を広く一般に啓蒙する上で大きな役割を果たしました。

『日本史研究』と林屋辰三郎との関係

奈良本は、林屋辰三郎らと共に「日本史研究会」を立ち上げ、雑誌『日本史研究』を刊行しました。林屋との関係は深く、その体格差から「大辰小辰」と並び称されたほか、立命館大学では「立命館大の二辰」とも呼ばれました。

奈良本辰也記念文庫

奈良本が理事を務めた学校法人瓜生山学園が運営する京都造形芸術大学には、奈良本辰也記念文庫が設置されています。そこでは、奈良本の蔵書や書斎の様子、遺品などが公開されており、彼の学問に対する情熱や人物像を偲ぶことができます。

受賞歴

奈良本の業績は、数々の賞によっても称えられました。1962年には毎日出版文化賞特別賞、1966年には部落問題研究所の業績により朝日賞を受賞。さらに、京都市文化功労者や松本治一郎賞、京都府文化賞特別功労賞も受賞しています。

著書

奈良本の著作は、『奈良本辰也自選　歴史を往く』や『奈良本辰也選集』など、多岐にわたります。また、宮本武蔵に関する講演をCD化したものも残されています。

まとめ

奈良本辰也は、日本の歴史学の発展に大きく貢献した人物です。教育者として多くの学生を育て、研究者として数々の優れた著作を世に送り出しました。彼の学問に対する情熱は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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