奥の細道文学賞

奥の細道文学賞

埼玉県草加市によって主宰される「奥の細道文学賞」は、日本の紀行文学や随筆に光を当てることを目的とした、国内で類を見ない特徴を持つ文学賞の一つです。この賞は、単に特定の地域を扱うだけでなく、広く日本の旅路を題材にした作品を対象としています。本稿では、「奥の細道文学賞」の成り立ちとその概要、そして同時に実施されている「ドナルド・キーン賞」についても詳しく解説します。

創設の経緯と目的

「奥の細道文学賞」は、草加市が市制施行から35周年を迎えたことと、俳聖として名高い松尾芭蕉の没後300年という記念すべき年が重なったことを機に、1992年に創設されました。これは、芭蕉が『奥の細道』の旅において草加を訪れたという歴史的な縁にちなみ、文学を通じた文化振興を図る目的で企画された記念事業です。この賞は、単に特定の文芸ジャンルに限定されることなく、旅の経験やそこから得られる感動、思索を表現した紀行文や随筆作品を広く募集しています。

ドナルド・キーン賞の併設

2012年には、この文学賞に加えて、新たに「ドナルド・キーン賞」が創設されました。これは、日本文学研究の第一人者であるドナルド・キーン氏の功績を称えるとともに、近世俳諧、特に松尾芭蕉や『奥の細道』、その他の重要な俳人や作品に関する学術的な評論作品を奨励するための賞です。「奥の細道文学賞」と「ドナルド・キーン賞」は同時期に募集が行われ、合同で選考、発表されています。

応募資格と作品規定

これらの賞の大きな特色として挙げられるのは、応募資格に対する門戸の広さです。「奥の細道文学賞」および「ドナルド・キーン賞」のいずれにおいても、応募者の年齢、職業、国籍は一切問われません。これは、国内外の様々なバックグラウンドを持つ人々からの多様な視点や表現を歓迎する姿勢を示しています。

応募作品の形式についても明確な規定があります。

奥の細道文学賞: 日本語で記述された作品を対象とし、分量は400字詰原稿用紙換算で35枚程度と定められています。
ドナルド・キーン賞: こちらも日本語作品の募集であり、分量は400字詰原稿用紙換算で40枚以内とされています。

いずれの賞も、規定の文字数や言語条件を満たす作品であれば応募が可能です。

受賞内容

両賞における受賞者には、その功績を称える賞が贈られます。最高位である大賞受賞者には、表彰状が授与されるほか、副賞として松尾芭蕉翁の像と賞金50万円が贈呈されます。また、大賞に次ぐ優秀賞や、将来が期待される佳作に選ばれた応募者にも、それぞれ表彰状と副賞が贈られます。

後援団体

これらの文学賞は、その運営と意義が認められ、多くの公的機関や団体からの後援を受けています。具体的には、国の行政機関である総務省や文化庁をはじめ、埼玉県、「奥の細道サミット」、そして公益社団法人ブルボン吉田記念財団などが名を連ねており、賞の権威と継続的な活動を支えています。

このように、「奥の細道文学賞」と「ドナルド・キーン賞」は、日本の旅や文学研究に新たな光を当て、多くの人々に創作や探求の機会を提供している重要な文学賞と言えるでしょう。

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