随筆

随筆とは

随筆（ずいひつ）は、文学の一形態であり、作者の経験や読書などから得られた知見や情報を元に、個人の感想や思考を反映させた散文です。このジャンルは、随想（ずいそう）やエッセイ、エッセー（英語のessay）といった異なる呼び名を持っています。

概要

随筆というカテゴリは、形式や内容が極めて広範であるため、単純にまとめて理解することは難しいとされています。たとえば、近世の随筆を編纂した『日本随筆大成』には、狭義の随筆だけではなく、書物からの抄出に批評を加えたものや、歴史的風俗の考察、出来事の記録なども含まれています。また、現代においても『日本の名随筆』のように、評論や書物解説も随筆として扱われています。

エッセーという言葉は、西洋の文化においては、フランス語の「essayer」やラテン語の「exagiare」に由来し、「重さを測る」または「試みる」を意味します。この形式は、フランスの思想家ミシェル・ド・モンテーニュによって自己を語る文学のスタイルとして確立されたと考えられています。

日本における随筆の歴史

日本の随筆の起源は、10世紀末に清少納言が執筆した『枕草子』にさかのぼると言われています。この作品には、日常の風景に対する卓越した観察眼が表れ、「をかし」という言葉でその鋭さが表現されています。その後、鴨長明の『方丈記』や吉田兼好の『徒然草』など、さまざまな随筆作品が続々と発表されました。

江戸時代に入ると、文学的な随筆だけでなく、学問や見聞録に基づく随筆も登場しました。この時期に関しては、中村幸彦が『四庫全書』の「雑家類」に基づき、随筆をいくつかのカテゴリーに分類しています。「雑考」（学問的表現）や「雑説」（思想的随筆）、そして「雑品」（研究的随筆）など、さまざまな形態が展開されました。江戸時代の代表作には、本居宣長の『玉勝間』、松平定信の『花月双紙』、新井白石の『折たく柴の記』、天野信景の『塩尻』などがあります。

西洋におけるエッセーの歴史

西洋のエッセーは、古代ギリシアのテオプラストスによる著作『人さまざま』が起源とされることがあります。その後、古代ローマ時代にはキケロやセネカ、プルタルコスの作品にもこの形式の萌芽が見られます。一般的に、エッセーという文学スタイルは、ミシェル・ド・モンテーニュの『エセー』から始まったとされています。この時点から、自己の経験を語る作品が多く執筆され、英文学にも影響を与えました。

18世紀から19世紀にかけて、雑誌や定期刊行物の普及によって随筆は広く一般読者に向けて発表されるようになります。この時代における著名な作品には、チャールズ・ラムのエッセーがあり、彼の作品は『Essays of Elia』（1823年）や『The Last Essays of Elia』（1833年）にまとめられました。

まとめ

随筆は、文化や時代に応じて多様な形を持つ文芸形式であり、各国の文学史において重要な役割を果たしています。日本と西洋の随筆・エッセーはそれぞれの文化的背景を反映しながら発展してきました。そのため、随筆は作家の思索や感想を深く知るための貴重な源となっているのです。

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