奥村宏
奥村宏（1930-2017）は、日本の経済学者として、「会社学」という独自の視点から、日本企業の構造、特に法人による株式所有のあり方について深く分析・批判したことで知られています。
岡山県に生まれた奥村宏氏は、旧制第六高等学校を経て、1953年に岡山大学法文学部を卒業しました。卒業後は産経新聞記者として経済報道に携わった後、日本証券経済研究所の主任研究員を務めました。研究者としての道を深め、1980年には自身の代表的な研究テーマである「法人資本主義の構造 日本の株式所有」に関する論文で、大阪市立大学より商学博士号を取得しています。教育機関においては、1984年に龍谷大学教授に就任。その後、1994年からは中央大学商学部金融学科教授として教鞭を執り、2001年に定年を迎えました。
奥村氏の研究の中心は、日本の産業構造における企業グループや財閥の分析でした。彼は、大企業における株式所有構造に注目し、企業系列化の過程で進んだ企業間の株式相互持ち合いこそが、日本型株式会社の根幹をなす特色であると捉え、これを「法人資本主義」と名付けました。
奥村氏は、この法人資本主義が日本経済や企業経営に構造的な問題を招いていると厳しく批判を展開しました。その主な分析は以下の通りです。
株式の相互持ち合いが、真の所有者である個人株主からの株式所有を希薄化させ、「株式所有の空洞化」を引き起こす。
空洞化された株式所有構造は、企業の実際の業績とはかけ離れた株価の維持や上昇を支える一因となる。
系列内外の企業間連携を目的とした相互持ち合いは、本来あるべき株主による経営監視機能を形骸化させ、企業経営における「無責任体制」を構造的に作り出す。
こうした無責任な経営構造は、企業不祥事が繰り返されるのを防ぐことができない状態を生み出す。
さらには、会社組織への過度な帰属意識を持つ「会社本位人間」が生まれ、会社に盲目的に依存するような働き方が成立する土壌ともなる。
奥村氏は、こうした法人資本主義の構造的な問題を指摘し、日本企業のあるべき姿について論じ続けました。
奥村氏の著書は多岐にわたり、その研究成果を広く社会に問いかけました。法人資本主義や企業グループ、株式市場、そして株式会社のあり方に関する著書を多数発表しています。以下に代表的なものを列挙します。
『三井・三菱・住友』 (1966)
『外国資本 日本における行動と論理』 (1969)
『買占め・乗取り・TOB 株式取得の経済学』 (1973)
『法人資本主義の構造 日本の株式所有』 (1975)
『日本の六大企業集団』 (1976)
『企業集団時代の経営者 株式会社はどこへ行く』 (1978)
『銀行と企業その危険な関係』 (1978)
『株価はこうして決まる』 (1979)
『三菱-日本を動かす企業集団』 (1981)
『新・日本の六大企業集団』 (1983)
『法人資本主義 「会社本位」の体系』 (1984)
『日本の株式会社』 (1986)
『株価のからくり』 (1987)
『企業買収 M&Aの時代』 (1990)
『証券スキャンダル』 (1991)
『会社本位主義は崩れるか』 (1992)
『解体する「系列」と法人資本主義』 (1992)
『大企業解体のすすめ さらば法人資本主義』 (1993)
『日本・株式会社大改造計画』 (1994)
『会社本位主義「解体の時代」』 (1995)
『法人資本主義の運命 株式会社の「死に至る病」』 (1995)
『無責任経営「銀行の罪」』 (1996)
『21世紀の企業像』 (1997)
『総会屋スキャンダル 野村証券事件の構図』 (1997)
『株主総会』 (1998)
『無責任資本主義』 (1998)
『大企業解体 株式会社が変わる』 (1999)
『株式会社はどこへ行く 株主資本主義批判』 (2000)
『会社とはなにか』 (2001)
『株式相互持合いをどうするか』 (2001)
『エンロンの衝撃 株式会社の危機』 (2002)
『倒産はこわくない』 (2002)
『会社をどう変えるか』 (2003)
『会社はなぜ事件を繰り返すのか 検証・戦後会社史』 (2004)
『判断力』 (2004)
『会社は誰のものでもない。21世紀の企業のあり方』 (2005)
『三菱とは何か法人資本主義の終焉と「三菱」の行方』 (2005)
『株式会社に社会的責任はあるか』 (2006)
『株のからくり』 (2006)
『粉飾資本主義 エンロンとライブドア』 (2006)
『「まっとうな会社」とは何か 継続可能な会社の条件 奥村宏の集中講義』 (2006)
『会社学入門 実学のすすめ』 (2007)
『会社はどこへ行く』 (2008)
『世界金融恐慌』 (2008)
『徹底検証日本の三大銀行』 (2009)
『徹底検証日本の五大新聞』 (2009)
『経済学は死んだのか』 (2010)
『徹底検証日本の財界 混迷する経団連の実像』 (2010)
『徹底検証トヨタ』 (2011)
『東電解体 巨大株式会社の終焉』 (2011)
『トップの暴走はなぜ止められないのか』 (2012)
『パナソニックは終わるのか』 (2012)
『会社の哲学 会社を変えるために』 (2013)
『徹底検証日本の電力会社』 (2014)
『資本主義という病 ピケティに欠けている株式会社という視点』 (2015)
共著や翻訳も多数手掛けており、日本企業や資本主義の構造に関する批判的な視点を一貫して示し続けました。
奥村宏氏の研究は、日本経済の特異な構造を理解する上で重要な貢献を果たしました。
経歴
岡山県に生まれた奥村宏氏は、旧制第六高等学校を経て、1953年に岡山大学法文学部を卒業しました。卒業後は産経新聞記者として経済報道に携わった後、日本証券経済研究所の主任研究員を務めました。研究者としての道を深め、1980年には自身の代表的な研究テーマである「法人資本主義の構造 日本の株式所有」に関する論文で、大阪市立大学より商学博士号を取得しています。教育機関においては、1984年に龍谷大学教授に就任。その後、1994年からは中央大学商学部金融学科教授として教鞭を執り、2001年に定年を迎えました。
法人資本主義とその批判
奥村氏の研究の中心は、日本の産業構造における企業グループや財閥の分析でした。彼は、大企業における株式所有構造に注目し、企業系列化の過程で進んだ企業間の株式相互持ち合いこそが、日本型株式会社の根幹をなす特色であると捉え、これを「法人資本主義」と名付けました。
奥村氏は、この法人資本主義が日本経済や企業経営に構造的な問題を招いていると厳しく批判を展開しました。その主な分析は以下の通りです。
株式の相互持ち合いが、真の所有者である個人株主からの株式所有を希薄化させ、「株式所有の空洞化」を引き起こす。
空洞化された株式所有構造は、企業の実際の業績とはかけ離れた株価の維持や上昇を支える一因となる。
系列内外の企業間連携を目的とした相互持ち合いは、本来あるべき株主による経営監視機能を形骸化させ、企業経営における「無責任体制」を構造的に作り出す。
こうした無責任な経営構造は、企業不祥事が繰り返されるのを防ぐことができない状態を生み出す。
さらには、会社組織への過度な帰属意識を持つ「会社本位人間」が生まれ、会社に盲目的に依存するような働き方が成立する土壌ともなる。
奥村氏は、こうした法人資本主義の構造的な問題を指摘し、日本企業のあるべき姿について論じ続けました。
主な著作
奥村氏の著書は多岐にわたり、その研究成果を広く社会に問いかけました。法人資本主義や企業グループ、株式市場、そして株式会社のあり方に関する著書を多数発表しています。以下に代表的なものを列挙します。
『三井・三菱・住友』 (1966)
『外国資本 日本における行動と論理』 (1969)
『買占め・乗取り・TOB 株式取得の経済学』 (1973)
『法人資本主義の構造 日本の株式所有』 (1975)
『日本の六大企業集団』 (1976)
『企業集団時代の経営者 株式会社はどこへ行く』 (1978)
『銀行と企業その危険な関係』 (1978)
『株価はこうして決まる』 (1979)
『三菱-日本を動かす企業集団』 (1981)
『新・日本の六大企業集団』 (1983)
『法人資本主義 「会社本位」の体系』 (1984)
『日本の株式会社』 (1986)
『株価のからくり』 (1987)
『企業買収 M&Aの時代』 (1990)
『証券スキャンダル』 (1991)
『会社本位主義は崩れるか』 (1992)
『解体する「系列」と法人資本主義』 (1992)
『大企業解体のすすめ さらば法人資本主義』 (1993)
『日本・株式会社大改造計画』 (1994)
『会社本位主義「解体の時代」』 (1995)
『法人資本主義の運命 株式会社の「死に至る病」』 (1995)
『無責任経営「銀行の罪」』 (1996)
『21世紀の企業像』 (1997)
『総会屋スキャンダル 野村証券事件の構図』 (1997)
『株主総会』 (1998)
『無責任資本主義』 (1998)
『大企業解体 株式会社が変わる』 (1999)
『株式会社はどこへ行く 株主資本主義批判』 (2000)
『会社とはなにか』 (2001)
『株式相互持合いをどうするか』 (2001)
『エンロンの衝撃 株式会社の危機』 (2002)
『倒産はこわくない』 (2002)
『会社をどう変えるか』 (2003)
『会社はなぜ事件を繰り返すのか 検証・戦後会社史』 (2004)
『判断力』 (2004)
『会社は誰のものでもない。21世紀の企業のあり方』 (2005)
『三菱とは何か法人資本主義の終焉と「三菱」の行方』 (2005)
『株式会社に社会的責任はあるか』 (2006)
『株のからくり』 (2006)
『粉飾資本主義 エンロンとライブドア』 (2006)
『「まっとうな会社」とは何か 継続可能な会社の条件 奥村宏の集中講義』 (2006)
『会社学入門 実学のすすめ』 (2007)
『会社はどこへ行く』 (2008)
『世界金融恐慌』 (2008)
『徹底検証日本の三大銀行』 (2009)
『徹底検証日本の五大新聞』 (2009)
『経済学は死んだのか』 (2010)
『徹底検証日本の財界 混迷する経団連の実像』 (2010)
『徹底検証トヨタ』 (2011)
『東電解体 巨大株式会社の終焉』 (2011)
『トップの暴走はなぜ止められないのか』 (2012)
『パナソニックは終わるのか』 (2012)
『会社の哲学 会社を変えるために』 (2013)
『徹底検証日本の電力会社』 (2014)
『資本主義という病 ピケティに欠けている株式会社という視点』 (2015)
共著や翻訳も多数手掛けており、日本企業や資本主義の構造に関する批判的な視点を一貫して示し続けました。
奥村宏氏の研究は、日本経済の特異な構造を理解する上で重要な貢献を果たしました。
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