奥田直純

奥田直純

戦国時代に活躍した武将、奥田直純（おくだ なおずみ）は、勇猛さで名を馳せた人物として伝えられています。その生涯は、主に美濃の斎藤家、そしてその後の織田家という激動の時代を生き抜いた軌跡を辿ります。特に、身の丈が七尺（約210センチメートル）もあったという伝説は、並外れた体躯と力を象徴しており、その武勇伝に彩りを添えています。

斎藤義龍への仕官と武功

奥田直純は、美濃国茜部（現在の岐阜県岐阜市茜部周辺）に500貫文の所領を有していました。これは当時の価値で換算すると、かなりの知行地であったと言えます。彼は初め、美濃の戦国大名である斎藤義龍に仕えました。義龍は父である斎藤道三との対立を深め、やがて天文24年（1556年）には両者が長良川で激突します（長良川の戦い）。この父子相克の戦いにおいて、奥田直純は斎藤道三方の一員であった道家孫次郎と相対しました。道家孫次郎は「怪力無双」と称されるほどの猛者であり、容易ならぬ相手でしたが、直純は壮絶な戦いの末に見事これを討ち取るという大功を挙げます。

この道家孫次郎を討ち取った武功は、当時の人々を驚嘆させました。その圧倒的な力と勇猛さから、直純は「悪七郎五郎（あくしちろうごろう）」という異名で呼ばれるようになります。「悪」という字は、現代の否定的な意味合いとは異なり、ここでは「強い」「勇猛な」「豪胆な」といった賞賛の意味を込めて用いられています。悪七郎五郎という名は、まさに直純が戦場でどれほど恐れられ、また称賛された存在であったかを示しています。

織田信長への転属と晩年

斎藤義龍が永禄4年（1561年）に病死し、その後を継いだ斎藤龍興が織田信長によって追放されるなど、斎藤家が衰退すると、奥田直純は時の有力大名であった織田信長に仕えることとなりました。信長は広く各地の有能な武将を家臣に加えており、奥田直純のような武功著しい人物もその配下に加わったものと考えられます。織田家のもとで、直純が具体的にどのような働きをしたのか、詳細な記録は多くありませんが、おそらくはその武力を買われて、各地の合戦に参加したものと思われます。

奥田直純は元亀2年（1571年）、数え年49歳でその生涯を終えました。この年は、信長が比叡山延暦寺を焼き討ちした年でもあり、戦国の動乱は依然として続いていました。直純は、斎藤家の滅亡と織田家の天下統一が進む、まさに時代の転換期に生きた武将であったと言えるでしょう。

子孫の繁栄

奥田直純の死後、その家名は息子の三右衛門政次（さんえもん まさつぐ）によって受け継がれました。政次もまた父と同様に織田信長に仕えましたが、彼は自身の従兄弟にあたる堀秀政（ほり ひでまさ）と共に活動することが多かったようです。堀秀政は信長から厚い信頼を得ていた有能な武将であり、その庇護のもと、政次は武士としての道を歩みました。

政次はやがて、堀秀政との関係やその功績が認められ、織田信長から堀姓を賜ることとなります。これにより、名を「堀直政（ほり なおまさ）」と改め、奥田家から堀家へと家名を変えることとなりました。堀直政はその後も堀秀政の与力として、あるいは独立した武将として活躍し、その子孫は江戸時代を通じて堀家として存続し、大名家や旗本家として家名を大いに盛り立てました。奥田直純自身の武勇は、このように子孫である堀直政を通じて後世に伝えられ、その血筋が武家として栄えたことに繋がったのです。

（参考文献：堀直敬『堀家の歴史』、『寛政重修諸家譜』など）

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