女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約

女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約

概要

女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約（CEDAW）は、女性の権利の平等を守ることを目的とした国際的な枠組みです。この条約は、1979年に国際連合によって採択され、1981年に発効しました。現在、約189カ国が締約国となっており、各国において女子に対する差別を撤廃するための義務が定められています。

内容

この条約は、全30条から成り、政治、経済、社会、文化、市民など、あらゆる分野で男女の平等を実現するための具体的な措置を指示しています。特に、性別に基づくステレオタイプの撤廃や、教育の機会均等が広く扱われています。また、法令だけでなく、実際の慣習や軽視されがちな差別も問題視され、締約国にはそれらを改善する義務が課されています。

条約には特別措置も含まれており、特に母性の保護や一時的な措置としての男女の実質的平等促進が認められています。これにより、女性が妊娠や育児を理由に就業機会を失わないよう保護されています。特に第10条では教育に関する差別の撤廃、第11条では雇用機会と賃金について同等の扱いを保証する内容があり、性別による差別を明確に禁止しています。

署名・締約国と採択歴

2023年11月現在、98カ国が署名、189カ国が締約していますが、アメリカ合衆国は未だに条約を批准していません。日本は1980年に署名し、1985年には国内法の整備を経て正式に批准しました。これに伴い、男女雇用機会均等法などの改正が行われ、男女平等を推進するための具体的な取り組みが進められています。

選択的夫婦別姓制度訴訟

日本において、条約の第2条および第16条は、婚姻や家族関係に関する差別の撤廃を求めています。特に、夫婦同氏の規定が差別的とされ、複数回にわたり改善を求める勧告が行われてきました。2011年には選択的夫婦別姓に関する訴訟が提起され、最高裁はこの請求を退けましたが、判事の一部は違憲の意見を示しました。

米国の状況

アメリカは1980年に条約に署名したものの、議会上院が未批准のままでいることが問題視されています。国内における反対意見やその他の要因により、今でも批准に至っていません。

選択議定書

選択議定書は、条約の締約国に所属する個人または集団が、条約違反を通報できる仕組みを定めています。ただし、国内での救済措置が実施されている場合には通報できないため、この点が国際的な議論を呼んでいます。日本はこの選択議定書について懸念を示し、現在も未批准の状態が続いています。

改正と日本の状況

女子差別撤廃条約では、締約国に条件付けて進捗報告する義務がありましたが、委員会の運営が遅滞する事態が発生しました。そのため、1995年の修正案により、会合の期間と頻度が見直され、各国の進捗をより効率的に評価する体制が整えられました。日本はこの改正についても同様に国会で承認し、実施しています。

まとめ

女子差別撤廃条約は、女性の権利を制度的に守るため、各国が取り組むべき義務を定めた重要な国際法です。男女平等の確立に向けた努力は続けられており、各国の実態に応じた取り組みが求められています。今後もこの条約を基盤に、より包括的で平等な社会を築いていくことが期待されます。

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