女必殺拳シリーズ

『女必殺拳シリーズ』：日本初の本格的女性アクション映画

『女必殺拳シリーズ』は、1974年から1976年にかけて製作された東映のアクション映画シリーズです。主演は当時若手女優だった志穂美悦子。空手や拳法をベースにしたアクションと、志穂美悦子の凛々しい姿が人気を博し、日本映画史に新たなジャンルを築きました。

シリーズ概要

このシリーズは、志穂美悦子が演じるヒロインが、様々な悪と戦う姿を描いています。シリーズを通して、彼女の卓越した格闘スキルと、決して媚びない強さが際立っています。

シリーズは、以下の作品で構成されます。

1. 『女必殺拳』 (1974年)
日本と香港のハーフである李紅竜（志穂美悦子）が、麻薬組織に立ち向かうアクション映画。志穂美悦子のデビュー作であり、彼女の代名詞とも言える「乱花血殺」が初めて登場します。
2. 『女必殺拳 危機一発』 (1974年)
李紅竜が、行方不明になった友人を捜すため日本にやってきて、悪の組織と戦うアクション映画。
3. 『帰って来た女必殺拳』 (1975年)
李紅竜が、麻薬組織に囚われた友人を救うため、横浜を舞台に戦いを繰り広げるアクション映画。
4. 『女必殺五段拳』 (1976年)
舞台を京都に移し、織物問屋の一人娘である中川菊（志穂美悦子）が、悪と戦うアクション映画。これまでのシリーズとは異なり、京都を舞台にしています。

最初の3作品は、監督、脚本、音楽が共通で、志穂美が李紅竜を演じていますが、『女必殺五段拳』は京都撮影所製作のため、スタッフが一新され、志穂美の役柄も変更されています。このため、最初の3作をシリーズとする見方と、『女必殺五段拳』を含めた4作をシリーズとする見方があります。

製作の背景

東映は、当時人気が低迷していた「女番長シリーズ」に代わる新たなアクション映画を模索していました。そこで白羽の矢が立ったのが、当時「アジアNo.1女ドラゴン」と呼ばれていたアンジェラ・マオでした。

当初、アンジェラ・マオを主演とする企画が進められていましたが、何らかの事情でアンジェラ・マオの出演が不可能となり、代わりに、千葉真一が所属するジャパンアクションクラブ（JAC）に所属していた志穂美悦子が抜擢されることになります。この志穂美の抜擢が、本シリーズ誕生の大きな転機となりました。

志穂美は、アンジェラ・マオよりも大柄で、その肢体の美しさも際立っていました。彼女は、空手やアクションの才能を発揮し、観客を魅了しました。また、彼女は、お色気に訴えることなく、あくまでも強さと美しさを追求する姿勢が、特に女性層から圧倒的な支持を得ました。

作品の特徴

『女必殺拳シリーズ』の特徴は、以下の点が挙げられます。

本格的なアクション: 空手をベースにした、スピーディーで迫力のあるアクションが繰り広げられます。志穂美悦子の鍛え上げられた身体能力が存分に発揮されています。
強い女性像: ヒロインは、男に頼ることなく、自らの力で戦う強い女性として描かれています。従来の日本の映画にはなかった、新しい女性像を提示しました。
* 志穂美悦子の魅力: 主演の志穂美悦子は、その美貌とアクションスキルで、観客を魅了しました。彼女の存在が、本シリーズの成功に大きく貢献しました。

シリーズの評価

本シリーズは、公開当時から大きな話題を呼び、特に女性層から圧倒的な支持を得ました。志穂美悦子のブロマイドは飛ぶように売れ、彼女は一躍アイドルとなりました。

批評家からも高い評価を受けており、日本映画における女性アクション映画の先駆けとして、その後の作品に大きな影響を与えました。志穂美悦子は、このシリーズによって、日本映画初の女性功夫アクションスターとしての地位を確立しました。

海外での展開

『女必殺拳シリーズ』は、日本だけでなく海外でも人気を博しました。特に東南アジアでは、千葉真一主演のカラテ映画とともに大ヒットし、インドネシアでは日本の映画ブームを牽引しました。

また、東映は本シリーズをきっかけに、東南アジアや共産圏にも積極的に進出しました。これにより、東映作品の海外展開が大きく進展し、後の『新幹線大爆破』などの海外展開につながりました。

シリーズがもたらした影響

『女必殺拳シリーズ』は、日本映画界に大きな影響を与えました。それまで男性中心だったアクション映画の世界に、女性アクションスターという新たなジャンルを確立しました。

また、志穂美悦子の存在は、多くの女性に勇気を与え、後の女性アクションスター誕生の礎となりました。

金子修介監督の2014年映画『少女は異世界で戦った』は、金子が三鷹東映で観た『仁義なき戦い』や志穂美のアクション映画から企画を発想し、70年代東映調のアクション映画をやってみたいと思い、志穂美の遺伝子を持つ女優を集めて製作したものです。

まとめ

『女必殺拳シリーズ』は、志穂美悦子の魅力を最大限に引き出した、日本映画史に残る傑作アクション映画です。その後のアクション映画に多大な影響を与えただけでなく、多くの人々に夢と希望を与えました。

今もなお、その魅力は色褪せることなく、多くのファンを魅了し続けています。

もう一度検索