女王陛下の007

『女王陛下の007』

概要

『女王陛下の007』（原題：On Her Majesty’s Secret Service）は、イアン・フレミングによる007シリーズの長編第10作目です。1963年にジョナサン・ケープより出版され、日本では同年に早川書房から井上一夫の訳で『女王陛下の007号』というタイトルで発売されました。

あらすじ

物語は、スペクターのリーダーであるブロフェルドを追う執拗な任務に疲れたジェームズ・ボンドが、辞職を考えているところから始まります。カジノ・ロワイヤルで大金を賭けて敗北した公爵夫人、テレサ・ディ・ヴィセンゾを助けることから、彼の運命が大きく変わっていくのです。

テレサとの一夜の後、ボンドは彼女の父、コルシカのマフィアのリーダーであるマルク＝アンジュ・ドラコに囚われ、テレサの心の痛みを癒すために結婚を申し出られます。しかし、ボンドはテレサ自らが立ち直るように説得し、そのおかげでドラコからブロフェルドの潜伏地がスイスであるという情報を得ることに成功します。

ブロフェルドは、ド・ブーヴィル伯爵を名乗り、イギリスの紋章院にその確認を申請していました。ボンドは、紋章官のヒラリー・ブレイ卿に成りすまし、アルプスにあるブロフェルドの山荘「ピッツ・グロリア」に潜入します。そこで、彼がアレルギー治療の名目で10人のイギリス人女性を催眠術で操り、生物兵器を用いてイギリスの経済を脅かそうとしていることを知るのです。

ボンドはMの黙認を得て、ドラコの協力を得ながらピッツ・グロリアを急襲し、テレサを救出すると共に研究所を破壊しますが、ブロフェルドは逃げてしまいます。その後、ボンドはテレサと結婚し、彼らの新婚旅行が始まります。しかし、その道中、マセラッティに乗ったブロフェルドが彼らの前に現れるのです。

主な登場人物

• - ジェームズ・ボンド：イギリス諜報部のエージェント。世界を舞台に数々の冒険を繰り広げる007であり、今回はヒラリー・ブレイ卿としてブロフェルドに接近します。
• - エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド：犯罪組織スペクターのリーダー。前作までに007によって阻止された核恐喝事件の背後にいる男です。
• - マルク＝アンジュ・ドラコ：コルシカのマフィア、ユニオン・コルスの首領で、テレサの父。彼とのやり取りがボンドの運命を動かします。
• - テレサ・ディ・ヴィセンゾ：ドラコの娘であり、悲しい過去を持つ女性。ボンドとの出会いによって彼女の人生も大きく変わります。
• - バルタザール・ド・ブルーヴィル伯爵：ブロフェルドが変装し、アレルギー治療を装う男です。その正体は本作の重要なミステリーの一部です。
• - イルマ・ブント：ブロフェルドの側近で、ピッツ・グロリアの女性たちの管理を担当しています。

その他の情報

作中には、ウルスラ・アンドレスのような映画スターが登場する記述もあり、007シリーズを知る読者にとっては興味深い趣向が含まれています。出版されたのは1963年ですが、物語の緊張感やキャラクターの深さは、今なお多くの読者を楽しませています。

この作品は、007シリーズならではのスパイ活動、恋愛、そしてサスペンスが巧みに絡み合い、フレミングの筆致によって描かれた魅力ある冒険譚です。

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