紋章院

紋章院 (College of Arms)

紋章院は、イギリスの国民に新たな紋章を授与する責任を持つ正式な機関です。この機関は、イングランド、ウェールズ、北アイルランドにおける紋章及び系譜を統括しています。設立の経緯は、1484年に英王リチャード3世からの特許状によって始まりました。これは、現代の紋章院の基盤を築いた出来事として特筆されます。

機関の役割

紋章院の主な役割は、新しい紋章のデザインと授与だけではなく、既存の紋章の使用に関する様々な要請にも応じることにあります。市民が祖先の紋章を引き継ぎたい場合、紋章院はその出自や系譜に関する情報を考慮し、必要に応じてディファレンシングを加えた紋章を再発行します。このように、紋章院は古い伝統を守りつつ、現代のニーズに適応し続けています。

また、紋章院は国王の典礼に関連する重要な役割も果たしています。公式な式典において、紋章官たちは国王の名の下に宣言を行ったり、儀式を進行したりします。これにより、紋章官は歴史的な役割を継承し、国家の文化と伝統を支えています。

めざましい歴史と建物

紋章院は、ロンドンのセント・ポール大聖堂近くに位置しています。その歴史は長く、1484年に設立された際には、当初コールドハーバーという場所にありました。その後の歴史の中で、様々な変遷を経て現在の位置に移転しました。1555年の再設立以降、紋章院は現在のクイーン・ビクトリア・ストリートで活動しています。

特に注目すべきは、1666年のロンドン大火によって古い建物が失われた後、紋章院は再建を果たし、今日もその重要な役割を果たし続けている点です。火事後も迅速に再建されることができた背景には、紋章官たち自身が資金を集め、再建に貢献したという歴史があります。

職務の構成

紋章院内には、キング・オブ・アームズ、ヘラルド、パーシヴァントの三つの階級が存在します。これらの職務は、王政の伝統に根ざしており、特定の地域や役割に基づいてそれぞれの紋章官が任命されます。特に、ガーター・プリンシパル・キング・オブ・アームズは最上級の紋章官であり、その他のキング・オブ・アームズたちは地域を分担しています。

職務を遂行する紋章官たちは、公式の活動に加えて、一般からの要望や記録業務も担当します。紋章院には、一般人が利用できる窓口も存在し、様々な手続きをサポートしています。これにより、国民が自身の系譜や紋章にアクセスできるような環境を整えています。

複雑な紋章授与と相続

紋章の授与には厳格な規定があり、資格を持つ者のみがその恩恵を受けることができます。請願書を提出し、審査を通過した後、紋章が授与されます。授与された紋章は、その後も子孫に引き継がれることで、家系の歴史を象徴するものとなります。

また、氏名変更や紋章の譲渡も紋章院において記録されるため、系譜を通した紋章の使用は重要な文化的背景を持ちます。これにより、個々の家系や社会的背景が紋章に反映され、個人や家族の伝統が受け継がれていくことになります。

結論

紋章院はその役割を通じて、イギリスの伝統と文化を守り続けており、歴史的な重要性を持った機関です。国王の承認の元、客観的かつ公平に紋章の授与を行い、古くからの慣習を現代社会に適用することで新たな文化的な価値を生み出しています。

もう一度検索