女番長ゲリラ

1972年に製作・公開された日本映画『女番長ゲリラ』は、当時ヒットを飛ばしていた「女番長シリーズ」の第三作にあたります。シリーズを通じてバイオレンスやアクション、そして独自の美学を描き出した鈴木則文監督が、本作でもメガホンを取りました。

この作品の大きな特徴の一つは、シリーズの主役が交代した点です。前作まで主演を務めていた池玲子から、新たに杉本美樹へとバトンが渡されました。しかし、池玲子も主要な役どころで引き続き出演しており、新旧主演女優がスクリーン上で競演するという豪華な布陣が実現しています。これは当時のファンにとって非常に注目されたポイントでした。

具体的な物語のあらすじは公開されている情報からは明らかではありませんが、膨大なキャストリストからは、複数のグループや勢力が複雑に絡み合う群像劇であったことが強く示唆されます。物語の中心となるのは、帰山幸子（杉本美樹）が団長を務める「新宿赤ヘル団」や、リカ（衣麻遼子）が番長を務める「京都スケバン連合」といったスケバンたちのグループでしょう。特に、京都スケバン連合には、シリーズの顔であった池玲子演じる先代番長・奈美も登場しており、彼女が物語にどのような影響を与えるのかが気になるところです。

しかし、登場人物はスケバンたちに留まりません。「筒井組」という名のヤクザ組織が登場し、組長の筒井猛（安部徹）をはじめとする面々がリストアップされています。彼らがスケバンたちと対立するのか、あるいは手を組むのか、組織間の駆け引きが重要な要素となっていたと考えられます。さらに、「八田ジム」関係者や「暴走族イージーライダー」といった集団も物語に登場し、抗争や人間ドラマに深みを与えていたようです。ボクサーの宮崎一郎（成瀬正孝）やジム会長の八田正剛（水島道太郎）といった人物も、スケバンやヤクザとは異なる視点から物語に関わっていたのかもしれません。

本作に登場するキャラクターたちは、主要人物以外にも非常に個性的で強烈な存在感を放つ人物が多数確認できます。たとえば、墓場を根城にするような風変わりなニセ医者・竹見兵衛（岡八郎）や、彼にまつわる人々、そして「淋病牧師」という衝撃的な肩書きを持つ桜井（大泉滉）など、当時の東映ピンク映画・アクション映画らしい、アウトローでエキセントリックなキャラクターたちが作品世界を彩っています。こうした人物たちの存在が、作品全体のユニークなトーンを決定づけていたと言えるでしょう。

音楽面では、主演の杉本美樹が歌う主題歌「女番長（すけばん）流れ者」が作品を盛り上げます。作詞はすずきすずか、作曲は荒木一郎という布陣です。さらに、挿入歌として、シンガーソングライターであるあがた森魚の代表曲「赤色エレジー」が使用されています。あがた森魚自身もキャストとして出演しており、彼の音楽が映画の雰囲気とどのように結びついたのかは非常に興味深い点です。

『女番長ゲリラ』は、主演の交代というシリーズの大きな節目に製作された作品であり、新旧主演女優の共演、多様な登場人物による複雑な人間関係、そして個性的な音楽によって、シリーズの中でも独特の地位を占める一作と言えるでしょう。現在ではカルト的な人気を持つ作品として語られることもあります。

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