好塩菌

好塩菌とは

好塩菌（こうえんきん）とは、生育に0.2 mol/dm3以上の塩化ナトリウム（NaCl）濃度を必要とする原核生物のことです。身の回りの土壌に生息する細菌から、高濃度の塩湖に生息する古細菌まで、多様な種類が存在します。

好塩菌の分類

好塩菌は、生育に最適な塩分濃度によって、以下の4つの範疇に分類されます。

非好塩菌: 0-0.2 mol/dm3の塩分濃度で生育する菌。ほとんどの土壌細菌が該当します。
低度好塩菌: 0.2-0.5 mol/dm3の塩分濃度で生育する菌。海洋細菌の多くが該当します。
中度好塩菌: 0.5-2.5 mol/dm3の塩分濃度で生育する菌。様々な含塩試料から分離される細菌が該当します。
高度好塩菌: 2.5-5.2 mol/dm3の塩分濃度で生育する菌。高度好塩性古細菌が該当します（高度好塩古細菌のみを高度好塩菌とすることもあります）。

ただし、この分類はあくまで最適な塩分濃度に基づいたものであり、自然環境においては、海洋細菌が淡水系で分離されるなど、例外も多く存在します。

代表的な好塩菌

高度好塩菌に分類される生物には、以下のようなものがいます。

古細菌

ハロバクテリウム綱の古細菌: 30属以上が含まれる、狭義の高度好塩菌です。
Methanohalbium evestigatum: メタン菌の一種です。
"Nanohaloarchaea": 未培養のユリアーキオータです。

真正細菌

Actinopolyspora halophila
Ecthiorhodosphira halophila
Halobacteroides halobius
Salinibacter ruber

その他の分類法

塩分濃度に対する反応の違いから、以下のような分類も提唱されています。

嫌塩菌: 塩の添加によって生育が阻害される菌（例：大腸菌）。
耐塩菌: 比較的多量の塩分にも耐える菌（10-20%程度の塩分濃度）。
好塩菌: 微量の塩分を好む菌。生理食塩水程度の塩分濃度で生育しますが、高濃度の塩分は阻害的です（例：腸炎ビブリオ）。
高度好塩菌: 高濃度の塩分を好む菌。微量の塩分でも生育しますが、10%以上の塩分濃度で最適に生育します（例：Bacillus saliphilus）。
嗜塩菌: 生育に一定以上の塩分濃度を必要とする菌。海水程度の塩分濃度（3-3.5%）以上を要求します（例：Kushneria indalinina）。
極度嗜塩菌: 非常に高い塩分濃度を要求する菌。10%以上の塩分濃度がなければ生育できず、それ以下の濃度では死滅するものが多いです（例：Natronobacterium gregoryi）。

関連事項

エクトイン: 好塩菌が生産する、浸透圧保護物質の一種です。

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