好気性生物

好気性生物とは

好気性生物（または好気性菌）は、酸素を利用した代謝を行う生物のことです。細胞呼吸において、糖や脂質などの基質を酸化してエネルギーを獲得します。この概念と対立するのが嫌気性生物です。

好気性生物の種類

好気性生物には、酸素に対する要求性によっていくつかの種類があります。

偏性好気性生物: 生存に酸素が必須。好気呼吸に依存しています。
通性嫌気性生物: 酸素を利用できますが、嫌気的なエネルギー産生も可能です。
微好気性生物: わずかな濃度の酸素のみを利用できます。
耐気性生物: 酸素存在下でも生存可能ですが、酸素を最終電子受容体として利用しません。

好気性生物の細胞内には嫌気的な部分も存在し、酸素は特定の好気的な部分でのみ利用されます。嫌気的な部分に酸素が存在すると、生物にとって有害となる場合があります。

好気性細菌の進化

好気性細菌は、藍藻類の誕生によって大気中の酸素が増加したことがきっかけで誕生したと考えられています。また、ある種の好気性細菌はミトコンドリアの祖先であるとも言われています。

エネルギー獲得のメカニズム

好気呼吸におけるグルコース（単糖）の酸化は、エネルギー獲得の良い例です。


C6H12O6 + 6O2 + 38ADP + 38phosphate -> 6CO2 + 6H2O + 38ATP


この反応では、グルコース1分子と酸素6分子から、二酸化炭素6分子、水6分子、そして38分子のATP（アデノシン三リン酸）が生成されます。ATPはエネルギーの通貨として機能し、様々な生命活動に利用されます。

この反応で放出されるエネルギーは約2,880 kJ/molで、グルコース1分子あたり38分子のADP（アデノシン二リン酸）からATPを再生することで保存されます。これは、嫌気的反応で産み出されるエネルギーの約19倍にも相当します。真核生物は、膜透過に必要なエネルギーを除き、グルコース1分子あたり正味36分子のATPを得ることができます。

この反応は、解糖系、クエン酸回路、酸化的リン酸化という3つの連続した生化学的反応から構成されています。好気性生物が必ずしもこの反応系を全て利用するわけではありませんが、嫌気性生物よりもATP生産量が多く、生存に有利です。

好気性生物の例

動物: ほとんど全ての動物は偏性好気性です。
真菌類: ほとんどの真菌類も偏性好気性です。
細菌: Nocardia、Pseudomonas aeruginosa、Mycobacterium tuberculosis、Bacillus subtilisなどが偏性好気性細菌の例です。
古細菌: Aeropyrum pernix、Nitrosopumilus maritimus、Picrophilus torridus、Halobacterium salinarumなどが好気性の古細菌として知られています。古細菌は嫌気性と思われがちですが、実際には記載されている種の半数が酸素を利用可能です。
酵母: 通性嫌気性菌の例です。
ヒト細胞: 酸素がない場合、乳酸発酵に切り替えてエネルギーを得る通性好気性です。しかし、人間全体としては偏性好気性と言えます。

エネルギー獲得の観点から、好気性であることは有利ですが、偏性好気性は高レベルの酸化ストレスに直面するという側面も持ち合わせています。

関連項目

嫌気性生物
通性嫌気性生物
微好気性生物
好気呼吸
嫌気呼吸
発酵
* 光合成細菌

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