妖精標本

『妖精標本』（フェアリー キューブ）は、由貴香織里による日本の漫画作品で、「花とゆめ」（白泉社）にて2005年から2006年にかけて連載されました。妖精をモチーフにした独特な世界観と、繊細な心理描写が魅力の作品です。番外編として『PSYCHO KNOCKER』も発表されています。

あらすじ

主人公の羽住衣杏（はすみ いあん）は、幼い頃から不思議な存在を感知できる力を持っており、自分の分身であるトカゲが見えていました。ある日、彼は世間を騒がす「妖精殺人」を目撃し、界外（かいと）という謎の男性から不思議な石（キューブ）を受け取ります。しかし、そのキューブにはトカゲが封印されており、衣杏は体を乗っ取られてしまいます。魂だけの存在となった衣杏は、界外の力を借りてエリヤ・バレットという少年の体に入り、翅人（はと）としてトカゲの行方を追うことになります。

登場人物

羽住衣杏（はすみ いあん）:
妖精を見ることができる少年。幼い頃からトカゲが見えていた。背中に羽の形をしたアザを持つ。

石椛鈴（いしなぎ りん）:
衣杏の幼馴染で、彼に想いを寄せている。衣杏の変化に戸惑い、彼の正体を疑う。

トカゲ:
衣杏にしか見えない存在。衣杏を憎み、体を奪う。その正体は、死産した衣杏の双子の兄、十六弥（いざや）。

界外（かいと）:
衣杏にキューブを渡し、事件を引き起こす。ガンカナー（愛を囁く者）という妖精で、デイモンズ・ドアを封印するために様々な術や契約を施されている。

エインセル:
非常に強大な力を持つ妖精。界外を慕っている。

エリヤ・バレット:
妖精殺人の被害者。トカゲに体を奪われた後、衣杏が彼の亡骸に入る。

バレット夫人:
エリヤの祖母。アイルランド出身で、視力を失っているが、妖精の存在を感じ取ることができる。

羽住一巳（はすみ かずみ）:
衣杏の父。元有名小説家で、国語教師。

羽住呉葉（はすみ くれは）:
衣杏の母。リャナン・シーという妖精。

梨世（りせ）:
衣杏の叔母で、呉葉の妹。リャナン・シーという妖精で、本当の名前はリュセフィオラ。

神門姿良（ごとう しら）:
神門グループの社長。生まれつき心臓に疾患がある。妖精神と契約を結んでいる。

大鴉（レイヴン）:
妖精。姿良の元で働いている。次元の瞳の力を持つデイモンズ・ドアの番人。

ドーシー:
かつて妖精界でトカゲと共に暮らしていた。トカゲにとっては母のような存在だった。

美優（みゆう）:
蛾の妖精。自身のゲノムを人間に注入して操ることができる。

カナリィ:
レイヴンの許婚。デイモンズ・ドアの封印を解いて死亡する。

制作背景

本作は、由貴香織里が短期連載を希望してスタートした作品です。短いストーリーの中で、読者に物語のテーマを理解してもらえるように構成されています。由貴は「コティングリー[[妖精事件]]」の写真に強く惹かれ、妖精をストーリーのモチーフとして選びました。彼女は妖精を「話が通じない別の生き物」「人間より力を持った理不尽な存在」と表現しています。

絵柄については、過去作での反省を踏まえ、細い線を少なくし、トーンを抑えめにしたと述べています。

書誌情報

由貴香織里 『妖精標本』 白泉社〈花とゆめコミックス〉、全3巻
2005年10月19日発売、ISBN 4-592-18351-7
2006年2月17日発売、ISBN 4-592-18352-5
* 2006年7月19日発売、ISBN 4-592-18353-3

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