姉崎一馬

姉崎 一馬（あねざき かずま）氏は、1948年に東京で生まれ、幼少期の一部を札幌郊外で過ごしました。日本の自然、特に森や樹木に深い愛情を注ぎ、写真家そして絵本作家としてその魅力を伝え続けています。

大学では東京農業大学農学部にて学び、卒業後は写真家の冨成忠夫氏に師事し、写真の世界へと進みました。彼のライフワークは、日本の豊かな自然、そこに息づく野生の樹木や森の姿を写真に収めることです。光と影、季節の移ろいの中で見せる木々の様々な表情を捉えた写真は、見る者に静かな感動を与えます。

写真家としての活動と並行して、絵本作家としても才能を発揮しています。代表作として知られる絵本『はるにれ』は、北海道の厳しい自然の中で生きる一本の木を描き、その生命力を感動的に伝えています。この作品は1982年にサンケイ児童出版文化賞を受賞し、多くの読者に親しまれています。他にも、『なつのかわ』など、自然をテーマにした心温まる絵本を発表しています。

また、姉崎氏の活動の重要な柱となっているのが、子どもたちを対象とした自然教育です。写真活動とほぼ同時期にあたる1970年代初頭から、次世代に自然の尊さを伝える活動を開始しました。1973年からは和歌山県で、小・中学生を対象とした体験型の自然学校「自然教室」を約20年間にわたり主宰し、子どもたちが実際に森に入り、五感を通して自然と触れ合う機会を提供しました。この活動は、子どもたちの自然への関心を高め、環境への意識を育む上で大きな役割を果たしました。

和歌山での活動後、新潟県での開催を経て、1995年には山形県西村山郡朝日町に、自然教室の活動拠点となる専用施設「わらだやしき自然教室」を開設しました。以来、毎年ここで自然教室を開催しており、全国から集まる子どもたちが、四季折々の自然の中で様々な体験をしています。火おこし、野外炊飯、森の探検、動植物の観察など、教科書だけでは学べない生きた自然体験を通して、子どもたちは自然の仕組みや恵み、そして厳しさを学びます。

長年にわたるこうした教育活動は高く評価され、修養団より第17回蓮沼門三教育奨励賞が贈られました。これは、彼の自然教育への献身と、子どもたちの健全な育成に果たした貢献が認められたものです。

著書は絵本、写真集、自然解説書、自然教室のノウハウ本など多岐にわたり、『ふたごのき』『樹』『雑木林』『木は生きている』『ブナの森』『木の花100選』『森の旅森の人』『四季ブナ』『森の祝福』『姉崎一馬の自然教室』『森のめぐみ』『日本の森大百科』『野山の樹木』『森はオペラ』『はっぱじゃないよぼくがいる』『森にめぐるいのち』など多数あります。これらの著書を通して、姉崎氏は自身の豊かな経験と視点から、自然の魅力や大切さを人々に伝え続けています。写真家、絵本作家、そして自然教育者として、彼の活動は日本の自然と人との関わりについて深く考えさせられる示唆に富んでいます。

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