自然学校

自然学校とは

自然学校とは、自然体験活動を年間を通して提供する施設や組織のことであり、その活動を通して、人と自然、人と人、そして人と社会を深くつなげ、自然と人間が共生する持続可能な社会の実現に貢献することを目的としています。

自然学校の定義

自然学校の定義は、時代や調査によって幅がありますが、一般的には「自然体験活動のための『場』『プログラム』『指導者』を年間を通じて提供できる施設や団体」とされています。自然体験活動の内容は、キャンプやハイキング、自然観察といった一般的なものから、農業体験、漁業体験、田舎暮らしのような生活体験、川や海、山でのスポーツまで、自然に関わる幅広い活動が含まれます。

2006年の調査では、自然学校は「活動を通して『人と自然』『人と人』『人と社会』を深くつなげ、自然と人間とが共生する持続可能な社会づくりに貢献する組織的な自然体験活動」と定義されており、責任者、連絡先住所、活動プログラム、活動場所、参加者がいることが条件とされています。

また、自然豊かな場所で宿泊可能な施設を持ち、指導者が常駐してプログラムを提供する場所だけでなく、都市に拠点を置き、自然豊かな場所での体験活動を提供する組織も「都市型自然学校」や「体験学校」として、広義の自然学校として扱われることがあります。

自然学校の活動テーマ・内容

自然学校の活動テーマは非常に多岐にわたります。主なものを以下に示します。

自然観察、自然体験活動
第一次産業や農漁村部での生活体験
青少年育成
環境教育
冒険教育
野外活動（アウトドア・スポーツを含む）
エコツーリズム
環境保全・自然保護活動
自然再生
指導者育成
企業人教育
調査研究

近年では、以下のような新しい領域にも取り組んでいます。

持続可能な「暮らしづくり」（自給農、自然エネルギー、地域通貨など）
食育・健康づくり
悩みを持つ青少年への支援（不登校、引きこもり、ニートなど）
地域振興
幼児教育
国際協力
自然災害被災地支援活動

これらの活動は、外部の専門家との協力のもとで進められることが多く、社会からの要請に応じて常に新しい領域が生まれています。また、1980年代末ごろから導入された「体験学習法」が、活動内容を構成する中心的な考え方となっています。

自然学校の経営

自然学校の経営規模は様々で、法人として数十名の指導者を雇用する組織的な運営から、個人経営や非営利団体による小規模運営まで多岐にわたります。年間収支も数億円にのぼる団体から100万円以下の団体まで存在します。また、専従スタッフを持たず、ボランティア主体で運営する団体や、公園管理など他の業務と兼務して運営するケースもあります。

主な収入源は、主催行事の開催、外部への講師派遣、行政からの受託事業、旅行代理店などとの提携です。主催事業は、主催者の思いや考え方を具現化できる一方で、広報、募集、運営などを全て自力で行う必要があり、手間がかかる割に利益率は低い傾向があります。講師派遣も収益性は高くありませんが、受託事業や提携事業は、指導ノウハウや経験を生かせる上に収益性も高いとされています。多くの自然学校は、これらの収入源を組み合わせて経営を成立させています。

多くの自然学校は、経営基盤、組織力、資金力、社会的認知などが乏しい中でスタートしており、経営基盤やマネジメントシステムを確立している自然学校はまだ少数です。経営力向上が、自然学校全体の今後の課題となっています。

自然学校の「指導者」とその専門性

自然学校を「自然体験学習の専門家組織」として捉えた場合、その専門性は以下のような要素で構成されています。

野外活動技術、野外生活技術
インタープリテーション（自然解説の技法）
あらゆる世代・対象に対応できる参加・体験型学習の展開手法
リスクマネジメント（安全管理）
企画・プランニング
地域計画・地域経営

自然学校の指導者は、単に自然に詳しいだけでなく、社会や地域の課題に対して具体的な解決策を提示できる総合的なスキルを身につけていることが求められます。多くの自然学校では、指導者養成講座を開講しており、短期間で基本的な指導法を学ぶものから、長期にわたる合宿形式で実践的な訓練を行うものまであります。大学や大学院でも、自然学校指導者の養成が行われるようになってきました。

自然学校の設立、運営主体

自然学校の設立、運営主体は、公立、民営といった単純な分類にとどまらず、その成り立ちや運営方法を含め、非常に多様です。主な類型は以下の通りです。

1. 民間（独立）型: 個人やグループが資金や労力を持ち寄り設立した自然学校。
2. 民間（部門）型: 旅行会社や出版会社など、既存の企業や団体の部門として運営される自然学校。
3. 民間（ボランティア主体）型: 施設や専従スタッフを持たず、ボランティアを中心に運営される自然学校。
4. 民間（CSR）型: 企業の社会貢献活動として設立・運営される自然学校。
5. 国公立（直営）型: 国や地方自治体が直接運営する自然学校。
6. 大学・学校型: 大学が所有する森林などを活用して運営する自然学校。
7. パートナーシップ型: 国や自治体、企業などが連携して運営する自然学校。
8. ネットワーク型: 地域全体で連携して自然体験活動を推進する運営形態。

これらのうち、民間（独立）型や民間（部門）型の自然学校は、他のタイプの自然学校に人材を供給する役割も担っており、自然学校のビジネスモデルや市場を牽引する存在となっています。

参照

関連文献

岡島成行『自然学校をつくろう』
佐藤初雄『社会問題を解決する自然学校の使命』
西村仁志『ソーシャル・イノベーションとしての自然学校』

関連項目

林間学校
臨海学校
* 修学旅行

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