始皇七刻石

始皇七刻石について

始皇七刻石（しこうしちこくせき）は、中国の秦の初代皇帝である始皇帝によって設置された顕彰碑の総称であり、秦の権力と始皇帝の功績を称えるために国内の6か所に建立されました。代わって残っているのは、泰山刻石と瑯琊台刻石の2基のみです。この刻石群は、当時の公式書体である篆書体で刻まれており、その多くは、秦の大臣であり始皇帝の側近でもあった李斯によって書かれたとされていますが、これには明確な証拠はありません。

建碑の背景

始皇帝が紀元前221年に秦を統一した翌年、彼は10年間の間に国内を巡幸し、合計4回の訪問を行いました。その際、特に東方と南方の征服地に焦点を当て、七刻石の建立によって秦の強大な権力を見せつけようとしました。この行動は、被征服民に対し絶対的な支配権を誇示する目的があったとされています。また、二世皇帝も父の刻石に自らの顕彰文を付加しています。

各刻石の現状

始皇七刻石と言われる7基の碑は、歴史を経て多くが失われ、現存するのは2基のみです。これらの遺物は、当時の書道や文化を理解するための重要な資料とされていますが、それぞれの保存状態は良好ではありません。

嶧山刻石

紀元前219年に建てられた嶧山刻石は七刻石の最初の碑で、非常に高い知名度を持っていました。このため多くの人々が碑の拓本を求め、地元の住民は苦しむことになりました。耐えかねた村人たちは碑を焼き、原石は失われ、その後模刻が行われることになります。

泰山刻石

同じく紀元前219年に建立された泰山刻石は、保存状態が悪く、北宋代の時点で既に多くの文字が摩滅していました。現存する部分は、二世皇帝に関する記載のみが残り、原石は現在、泰安博物館で保管されています。

瑯琊台刻石

瑯琊台刻石も紀元前219年に建立されたものですが、保存状態は厳しく、やはり北宋代には二世皇帝の部分だけが残されていました。清代に保護されていたものの、1900年に雷雨により海に沈んでしまい、その後再発見されています。現在の残存文字は86字に達しています。

之罘刻石、之罘東観刻石、碣石刻石、会稽刻石

他の刻石は現存せず、之罘刻石や之罘東観刻石は早い段階で失われており、詳細な記録も残されていません。碣石刻石は漢代に消失しましたが、拓本が模刻され存在しています。会稽刻石は唐代までは存在したことが記録されていますが、その後行方不明となりました。

研究と評価

始皇七刻石は唐代からすでに知られており、李陽冰などの書家が刻石から篆書を学んだことが伝わっていますが、正式な研究が始まったのは清代以降です。篆書に関する貴重な資料であるため、多くの研究者がこれを対象に多様な研究を行っています。しかし、残存する刻石は数が限られており、特に泰山刻石の文字は非常に少ないため、研究には他の資料を参照する必要があり、難しさが伴います。

このように始皇七刻石は、中国の歴史や書道、文化を知る上で重要な役割を果たしており、その存在は後世にわたる歴史的な価値を持っています。

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