李陽冰

李陽冰の生涯と業績

李陽冰（りようひょう）は、唐代中期に活躍した書家であり、源流を遡ると顔真卿との交流があったことから、開元年間（713 - 741年）に生きた人物と考えられています。彼は本貫を趙郡に持ち、書道の分野において特に篆書の復興に貢献したことが評価されています。李陽冰の生涯についての詳細は不明な点が多いのですが、『新唐書』によると、彼は「将作少監」として従事し、後に761年から762年にかけて宣州当塗県の県令として務めました。この期間中、詩人李白を支え、彼の詩集『草堂集』編纂にも関与したことが知られています。

書道との出会い

李陽冰が篆書に興味を持ち始めたのは、始皇帝の時代に建てられた「嶧山刻石」との出会いからと言われています。この経験を通じて、彼は篆書の筆法を磨いていき、それまで忘れられていたこの書体を復活させることに情熱を注いでいきました。特に「碧落碑」と呼ばれる古い碑に魅了され、何日もその前に立ち尽くして書法を学ぶ姿が伝えられています。このように、彼は篆書に早くから心を寄せていたことが伺えます。

書道改革の先駆者

唐代中期においては、書道界が従来の形式を守ろうとする保守派と、革新を目指す改革派の対立が激化していました。李陽冰は、従来の書風を打破し、篆書や隷書の世界に戻る復古主義的でした。彼の革新的なアプローチは、篆書をコアとした書作を復活させることに成功し、彼は「二李」として名を馳せました。これは、彼が李斯に並ぶ篆書の名家としての位置付けを得ることを意味します。

また、彼は顔真卿との深い友情を持ち、多くの碑に篆額を残しています。特に「顔氏家廟碑」の篆額は彼の代表作です。二人の師弟関係にあることからも、その影響や交流の深さを伺い知ることができます。

後世への影響

李陽冰の篆書復興の試みは、書道の世界において新たな流派を生むきっかけとなりました。彼が提唱した「篆書による書作」という分野は、後々の書道研究や実践に大きな影響を与えました。清代における漢字研究や篆書の実践は、李陽冰の業績に強く影響されています。彼の存在は、篆書に対する興味を引き起こし、多くの書家を生む結果となりました。

作品の評価

李陽冰は多くの碑や篆額、銘文を残しましたが、その中には失われたものが多く存在します。彼の現存する代表作には、大暦2年（767年）に刻まれた「李氏三墳記」や、大暦7年（772年）に福建省福州市の「般若台題記」が含まれています。

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