姜徳相

姜徳相の生涯と業績

姜 徳相（カン・ドクサン）は、日本の統治下にあった朝鮮に生まれ、21世紀初頭まで歴史学者としてその名を馳せました。彼は1932年2月15日に慶尚南道咸陽郡で生まれ、1934年には母と共に日本へ渡ります。彼の両親は廃品回収業を営んでおり、東京都渋谷区の広尾で育ちました。この背景は、後に彼が朝鮮の歴史と文化について考えを深める基盤となりました。

学歴と研究の始まり

姜は1950年に東京都立青山高等学校を卒業、その後、早稲田大学の第一文学部史学科に進学し、中国史を学びました。彼の研究意欲は、友人の影響で徐々に朝鮮史へとシフトします。1955年には早稲田大学を卒業し、大学院で朝鮮史の勉強を始め、その後の研究において彼は多くの業績を残すことになります。

1960年、姜は早稲田大学大学院商学研究科を修了。しかし、研究を続ける中で、関東大震災時の朝鮮人虐殺に関する資料の発見が彼のキャリアに大きな影響を与えることになります。彼は国立国会図書館で、当時未調査だった「公文備考」を見つけ、その研究に着手しました。

教授職と研究活動

姜は一橋大学で教授職に就く前にも多くの大学で教職を歴任しました。明治大学や東京大学などで教え、研究を進めつつ、渋谷で中華料理店も経営して生計を立てました。1989年には在日韓国人・朝鮮人として初めて国立大学の教授となり、歴史研究に拍車をかけました。

彼は常に朝鮮独立運動への敬意を表し、その重要性を説く立場を貫いていました。「日本は第二次世界大戦で米国に負けたのではなく、朝鮮の独立運動に負けた」との主張は、韓国における歴史認識に大きな影響を与えました。

主な業績と著作

姜の研究の中心は、関東大震災時における朝鮮人の虐殺に関するもので、彼はこの問題に関して詳細な調査を行い、次々と著作を発表しました。彼の主な著書には『関東大震災・虐殺の記憶』や『朝鮮独立運動の群像』があり、その内容は日本における朝鮮人の歴史や彼らの苦難に向き合うものです。特に『関東大震災』に関する一連の研究は、彼の代表作として広く認識されています。

死去と評価

2021年6月12日、姜徳相は89歳でこの世を去りました。彼の残した業績や著作は、現在も多くの研究者や市民に影響を与えています。姜の研究はただの歴史の記録に留まらず、民族的なアイデンティティや歴史認識の深化に寄与しており、今後もさらなる検証が期待される分野です。

彼の業績は、日本と朝鮮の関係に対する理解を深めるための重要な手がかりを提供しています。姜徳相の生涯は、生まれた背景や波乱に満ちた歴史を背負いながらも、学問を通じて自らの道を切り開いた一人の学者の物語です。

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