娼年

娼年（しょうねん）

『娼年』は、著者・石田衣良による恋愛小説で、彼のデビュー作とも言える長編作品です。本作は2001年に発売され、直木賞の候補作としても知られています。また続編には『逝年』があり、両作品は幸田育子の手によって漫画化され、人気のある雑誌『オフィスユー』で連載されました。

あらすじ

物語は、女性やセックスに対して興味を持たない大学生のリョウが、ある日女性向けの会員制ボーイズクラブのオーナーである御堂静香に誘われ、娼夫としての仕事を始めるところから始まります。リョウの20歳の夏、彼が出会うさまざまな理由を持った女性たちとの絡みが描かれています。しかし、オーナーである御堂静香のプライベートに対し、リョウは疑問を持つようになります。彼女には配偶者や恋人がいないことが不思議に思ったリョウは、静香に肉体関係を求めますが、静香はそれを拒否します。代わりに、静香は自分の娘をリョウに抱かせます。

この後、静香は実はHIVポジティブであることをリョウに告白し、彼女がリョウと肉体関係を持たなかったのは彼を嫌っているのではなく、感染を避けたいからだと明かします。この事実を知ったリョウは、同級生であり女友達のメグミから、こんな仕事をやめ、まっとうな生き方に戻るようにと忠告されます。しかし、リョウはその意見には従わず、メグミが静香のクラブで彼を指名します。その際、リョウは何も知らずにメグミの要求に応じて性行為を行いますが、これはメグミが仕掛けた罠であり、結果的に御堂静香を警察に密告することになります。このことを知ったリョウは、新聞でその報道を目にし、事態の深刻さに気づくことになります。

登場人物

• - 森中 領（リョウ）: 20歳の大学生で、恋愛に興味を持たず、週に1度しか大学に通わない。彼はバーでバーテンダーとして働いています。
• - 御堂 静香: 40代の女性で、ボーイズクラブ『Le Club Passion』のオーナー。彼女の正体は物語の鍵となります。
• - 田島 進也（シンヤ）: リョウの中学時代の友人でホスト。自信家な性格。
• - 咲良（サクラ）: ボーイズクラブで働く女性で、聴覚に障害を持っています。
• - 白崎 恵（メグミ）: リョウのゼミ仲間であり、物語を通じて重要な役割を果たします。

書誌情報

• - 単行本: 2001年7月5日、集英社、ISBN 4-08-775278-X
• - 文庫本: 2004年5月20日、集英社文庫、ISBN 4-08-747694-4、解説：姫野カオルコ
• - 漫画: 幸田育子作画 〈オフィスユーコミックス〉 全3巻

舞台と映画

『娼年』は2016年に『東京芸術劇場プレイハウス』にて舞台化され、高岡早紀が静香役を演じました。また、2018年4月には映画化もされており、松坂桃李がリョウを演じました。この映画は女性客から高い支持を受け、特に応援上映が話題を呼びました。

まとめ

『娼年』は、物語を通して、人間関係や自己認識の葛藤を表現した作品です。リョウの成長や彼が直面する困難は、多くの読者に共感を呼ぶ内容となっています。

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