婦人陸軍部隊

アメリカ陸軍婦人部隊(WAC)：第二次世界大戦における女性の貢献と社会状況

第二次世界大戦中、アメリカ陸軍は戦力の増強のため、女性を積極的に採用しました。その象徴として設立されたのが、婦人陸軍部隊（Women's Army Corps、略称WAC）です。1942年5月14日に補助部隊として設立され、1943年には正式な組織となりました。

WACの設立は、当時、男性兵士の不足という喫緊の課題に対するひとつの解決策でした。しかし、同時に、女性が軍隊で働くことへの社会的な抵抗も存在していました。陸軍上層部や保守的な世論からは、女性が軍服を着ること、ましてや戦闘に近づくことへの反対意見も根強かったのです。

それでも、約15万人のアメリカ人女性がWACや婦人陸軍補助部隊に勤務しました。看護婦を除けば、陸軍に務めた最初の女性たちであり、その多くはアメリカ本土で勤務しましたが、ヨーロッパ、北アフリカ、ニューギニアなど、世界各地の戦地にも派遣されました。ノルマンディー上陸作戦後わずか数週間後には、WACも海岸に上陸しています。

男性兵士の中には、女性の参加によって自身の地位が低下するのではないかと懸念する者もいました。また、女性が危険な任務から守られるべきだと考える者も少なくありませんでした。しかし、ダグラス・マッカーサー将軍はWACの女性たちについて、勤勉で規律正しく、男性兵士よりも不平が少ないと高く評価し、「私の一番の兵士たち」とまで言及しました。

多くの将軍がWACの拡大や女性の徴兵を提案しましたが、大衆の反発や議会の抵抗から、陸軍省は大幅な変更を避けました。それでも、15万人の女性兵士の貢献は、7個師団に匹敵する男性兵士を戦線に送り込むことを可能にしたと推測されており、その功績は計り知れません。ドワイト・D・アイゼンハワー将軍も、女性たちの「効率、能力、精神、決意による貢献は計り知れない」と述べています。

WACと同様に、海軍にはWAVES、沿岸警備隊にはSPARS、女性パイロット養成部隊にはWASPなど、女性が活躍する組織がアメリカ軍にもありました。イギリス空軍やドイツ国防軍にも同様の組織が存在しており、世界各国で女性の戦争協力が確認できます。

1978年にWACは解散しました。その後、アメリカ陸軍の女性兵士は男性と同じ部隊で勤務するようになりましたが、1994年まで女性兵士は戦闘地域への接近が制限されていました。これは、レス・アスピン国防長官が特定の部隊から女性を除外することで「捕虜になる実質的な危険」を取り除くよう命令したためです。

WACの歴史は、第二次世界大戦における女性の役割と社会的地位の変遷を象徴するものです。戦争という極限状況下において、女性たちは多大な貢献を果たしましたが、同時に、社会的な偏見や抵抗と戦いながら、自らの存在意義を証明し続けたのです。WACの女性兵士たちの努力と犠牲は、決して忘れてはならない歴史的遺産と言えるでしょう。

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