子供部屋のアリス

子供部屋のアリス

『子供部屋のアリス』（英: The Nursery "Alice" ）は、ルイス・キャロルによる1890年刊行の作品で、本書は彼の名作『不思議の国のアリス』を幼児向けにアレンジしたものです。この本は、特に0歳から5歳までの子どもたちに向けて、物語を優しく表現し直しています。キャロルは、オリジナルのエッセンスである言葉遊びやパロディを保ちながら、子どもたちに語りかけるような文体で新たに書き直しました。

挿絵とデザイン

本書には、著者自身が選んだジョン・テニエルの白黒挿絵から20の場面が取り入れられ、その挿絵はテニエルが子どもたちに見やすいように拡大・彩色されました。また、いくつかは新たに描き下ろされたものも含まれています。表紙のデザインはテニエルではなく、キャロルの友人であるE・ガートルード・トムソンが担当しています。

キャロルが幼児向けのアリスを企画したのは1881年のことで、1889年には印刷もされましたが、その色合いが派手すぎたため出版を中止しました。この未発表版は、原著『不思議の国のアリス』同様にアメリカへ輸出されています。

アリスのイメージ

『子供部屋のアリス』を通じて、アリスの姿は初めてカラーで紹介されました。印刷を担当したのは評判の良いエドマンド・エヴァンスで、アリスは青いワンピースに白いエプロンの代わりに、黄色いワンピースと青い縁取りのエプロンを着た姿で描かれています。この新しいビジュアルは、キャロルによって切手のデザインにも利用されました。

物語の語り口

キャロルは単に物語の内容を削減しやすくするだけでなく、まるで子供に直接本を読み聞かせるように、物語の進行中に問いかけを加えています。例えば、アリスが体のサイズを変える挿絵の後には、子猫より小さくなることと天井に頭をぶつけるほどの大きさになること、どちらを方がよいかと質問される場面があります。このような問いかけは、子どもたちの想像力を豊かにし、物語への興味を喚起します。

さらに、新たに加えられたエピソードが幾つか存在し、例えばダッシュという子犬に関連する物語や、チェシャ猫が登場する章に小さく描かれた「きつねのてぶくろ」と呼ばれる花の名前についての説明もされています。このように、キャロルは単なる物語の再構成に留まらず、アリスの冒険に新たな層を加え、幼児たちの心を惹きつける工夫を凝らしています。

『子供部屋のアリス』は、キャロルの創造力と配慮が詰まった作品で、幼児期に読む素晴らしい文学の一部として、親子で共に楽しむことができる貴重な存在です。

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