読み聞かせ

読み聞かせとは

読み聞かせとは、話者が子どもに対し、絵本などを見ながら音読する、または物語を読んで聞かせる行為を指します。対象年齢は乳幼児期から小学校低学年までが一般的ですが、高齢者向けの読み聞かせも行われています。読み聞かせは、子どもの情操教育や文字の習得を助けるだけでなく、読書への興味を育み、集中力を養う効果も期待されています。

歴史

日本における読み聞かせの歴史は、明治時代にまで遡ることができます。1896年、巖谷小波が小学校で語り聞かせを行った記録が残っていますが、読み聞かせという言葉が使われるようになったのは、第二次世界大戦後です。読書推進運動と読書教育の発展とともに、読み聞かせの重要性が認識されるようになりました。

1960年代には、椋鳩十が提唱した「母と子の20分間読書」運動がきっかけとなり、1967年には「日本子どもの本研究会」が読み聞かせの研究と普及に努めました。この頃から、地域文庫や家庭文庫といった市民活動も活発化し、子どもたちが本に親しむ機会が増えました。石井桃子による「かつら文庫」の活動は、家庭文庫の全国的な普及に大きく貢献しました。

2000年には「子ども読書年」が設けられ、OECDの学習到達度調査（PISA）で子どもの読解力低下が明らかになったことから、国を挙げて子どもの読書推進に取り組むようになりました。2001年には「子どもの読書活動の推進に関する法律」が施行され、2005年には「文字・活字文化振興法」が制定されるなど、国や自治体による読書環境整備が進められました。また、出版文化産業振興財団（JPIC）は、読み聞かせボランティアの養成やフォーラム開催を通じて、読み聞かせ運動を推進しました。

読み聞かせは、日本だけでなく、世界中の家庭で古くから行われてきました。18世紀には児童書が増え、読み聞かせがより身近なものとなりました。

効用

読み聞かせには、様々な効果が期待できます。

聞く力の育成: 物語を注意深く聞くことで、集中力や傾聴力が養われます。
想像力の育成: 言葉から情景や感情を想像することで、豊かな想像力が育まれます。
文章理解力の育成: 物語の構造や言葉の意味を理解することで、読解力が向上します。
読書への興味関心の育成: 本の楽しさを体験することで、読書に対する興味が深まります。
読み手と聞き手の交流: 読み聞かせを通じて、親子の絆やコミュニケーションが深まります。

読み聞かせは、0歳から中学生まで、幅広い年齢の子どもたちを対象に行うことができます。

読み聞かせの場と相手

読み聞かせは、様々な場所と相手との間で行われています。

家庭: 親が子どもに、祖父母が孫に読み聞かせを行います。
保育園・幼稚園: 保育者が園児に読み聞かせを行います。
小学校: 教諭や司書教諭、図書ボランティアが児童に読み聞かせを行います。
図書館: 司書や図書ボランティアが来館者に読み聞かせを行います。

読み聞かせの時間

読み聞かせを行う時間帯は、特に決まっていません。学校では朝の会や昼休み、終わりの会に行われることがあります。家庭や保育園では、就寝前に行われることが多いです。

読み方、本の選択、感想について

読み聞かせをする際は、大げさに読まず、淡々と読むことが推奨されています。過度な感情移入は、聞き手の想像力を狭める可能性があるからです。一語一語はっきりと、子どもが聞きやすく真似しやすいように読むことが大切です。また、選ぶ本によって読み聞かせの質が大きく左右されるため、年齢や発達段階に合った本を選ぶ必要があります。幼児の場合、同じ本を繰り返し読むことを求める場合もあります。読み終わった後に感想を聞くかどうかは、目的によって判断する必要があります。感想を聞いたグループは内容理解が高く、聞かなかったグループは想像力が高くなる傾向があるという研究結果があります。

関連情報

読み聞かせに関連する用語として、ブックトーク、ブックスタート、紙芝居、ストーリーテリング、読み聞かせボランティアなどがあります。また、読書へのアニマシオンという読書を促進するための活動も関連します。

参考文献

岡﨑那菜・鈴見祐悟・宮下寛太・和田多香子「絵本と子どもとの出会い おとなが仕掛けた「読み聞かせ」」『Campus』第211号、全学学類・専門学群代表者会議広報委員会（筑波大学）、2017年1月10日、1-5頁。
* NPO法人本と人とをつなぐ「そらまめの会」 編、種村エイ子 監修 編『私たち図書館やってます! ―指定管理者制度の波を越えて』南方新社、2011年5月1日、149頁。ISBN 978-4-86124-213-7。

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