子守学校

子守学校：日本の教育史における特異な存在

19世紀後半の日本。近代的な学校制度が整いつつあったものの、就学率は低迷していました。その大きな原因の一つが、幼い兄弟姉妹の世話で学校に通えない子どもたちの存在でした。特に農村部や漁村部では、経済的な事情から、女児が家庭内の幼児保育を担うことが一般的でした。このような状況を背景に、1870～1880年代にかけて、全国各地に「子守学校」が登場します。

子守学校の設立と普及

子守学校は、文字通り、幼い子どもを預かりながら学校に通うことを可能にするための学校でした。公立と私立の両方が存在し、全国で約320校もの子守学校が設立された記録が残されています。

1880年（明治13年）、文部省は全国の都道府県に対し子守学校の設置を命じました。翌年には、茨城県で渡辺嘉重氏が開いた学校が日本最初の子守学校として知られています。渡辺氏は、子守をする少女たちだけでなく、彼女たちが連れてきた幼児に対しても保育教育を施しました。その教育法をまとめた著書『子守教育法』も出版しています。

その後、子守学校は41都道府県に広がり、最長で50年以上運営された学校もあったと伝えられています。中には、現在の私立学校に発展した例も存在します。子守学校が設置できない地域には、子守学級が設けられました。

夜間学校や保育所への発展

子守をする子どもたちの多くは貧しい家庭の子どもたちでした。親が教育の重要性を理解せず、子守学校を歓迎しないケースも少なくありませんでした。このため、子守から解放される夜間に授業を行う夜間学校が開設されることもありました。

また、子守学校では、幼児の世話をする職員の配置が十分ではありませんでした。この課題を解決するため、民間レベルで本格的な保育施設の設立が進みます。1890年（明治23年）、新潟市で設立された「新潟静修学校付設保育施設」（後の赤沢保育園）は、日本最初の保育所とされています。

子守学校の歴史的意義

子守学校は、貧困や社会構造という特殊な事情の中で誕生した学校でした。しかし、その存在は、日本の夜間学校や保育所の設立に大きな影響を与えたと考えられています。日本の教育史において、子守学校は独特の意義を持つ、重要な存在だったのです。現代の教育制度を理解する上で、子守学校の歴史を知ることは不可欠と言えるでしょう。 子守学校は、日本の教育史における、社会問題解決への取り組みの一つとして重要な位置を占めています。

関連事項

貧民学校: 貧困層の子どもたちのための学校。子守学校と同様に、当時の教育格差を浮き彫りにする存在でした。
夜間学校: 就労しながら学ぶための学校。子守学校から発展した側面も考えられます。
* 保育所: 乳幼児の保育を行う施設。子守学校の理念を受け継ぎ、発展してきた施設です。

子守学校は、単なる教育施設というだけでなく、当時の社会問題を反映し、その解決に貢献した、日本の教育史における重要な一ページです。 現代社会においても、教育機会の平等や貧困問題への取り組みを考える上で、子守学校の経験から学ぶべき点は少なくありません。

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