子安美知子

子安美知子（1933年9月5日-2017年7月2日）は、日本のドイツ文学者、翻訳家として、そしてシュタイナー教育の第一人者として知られる人物です。朝鮮京城で生まれ、戦後は岡山県、豊橋市と転居を繰り返します。父は経済学者、弟は古典学者という知的な環境で育ち、東京大学教養学部を卒業後、同大学院比較文学比較文化専修修士課程を修了しました。修士論文では、平塚らいてうを取り上げました。

早稲田大学助教授、教授を歴任し、2004年に定年退職。名誉教授の称号を贈られました。1970年代には家族で西ドイツに留学し、娘をヴァルドルフ学校に通わせました。この経験は、彼女の著作『ミュンヘンの小学生』に結実し、1976年には毎日出版文化賞を受賞するなど大きな話題を呼びました。

この作品を皮切りに、子安美知子はシュタイナー教育に関する数々の著作を発表し、日本のシュタイナー教育ブームの先駆けとなりました。彼女の著作は、シュタイナー教育を分かりやすく紹介するものであり、多くの人々にこの教育方法への関心を高める役割を果たしました。ただし、一方では、批判的な視点が不足していることや、自身の教育観への影響を十分に述べていない点が指摘されることもありました。

シュタイナー教育に加え、子安美知子はドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデの作品にも造詣が深く、エンデの著作を翻訳する傍ら、彼と個人的な交流を持つなど、多様な分野で活躍しました。エンデの作品世界への深い理解は、彼女の翻訳の質の高さを支え、多くの読者にエンデの作品を届ける役割を果たしました。

また、子安美知子は「あしたの国まちづくりの会」理事、「九条科学者の会」呼びかけ人など、社会活動にも積極的に関与していました。2012年には瑞宝中綬章を受章し、その功績が広く認められました。2017年7月2日、肺炎のため83歳で死去。没後、正五位に追叙されました。

彼女の著作には、『ミュンヘンの小学生 娘が学んだシュタイナー学校』、『ミュンヘンの中学生 シュタイナー学校の教育から』、『魂の発見 シュタイナー学校の芸術教育』など、シュタイナー教育に関する多くの書籍があります。これらの著作は、シュタイナー教育を理解するための重要な資料として現在も高く評価されています。また、『エンデと語る』、『「モモ」を読む』など、ミヒャエル・エンデに関する著書も多数出版し、彼の作品世界を紹介する役割を果たしました。翻訳作品としては、『ふしぎな城』、『“授業”からの脱皮』、『わたしのなかからわたしがうまれる』など、多くの作品があります。

子安美知子の生涯は、ドイツ文学への造詣を深め、シュタイナー教育の普及に尽力し、ミヒャエル・エンデの作品世界を紹介するなど、多岐に渡る活動に満ち溢れていました。彼女の功績は、日本の文化・教育界に大きな影響を与え、現在も多くの人の心に生き続けています。

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