子規の庭

子規の庭：明治の俳人、正岡子規ゆかりの静寂の空間

奈良県奈良市に位置する「子規の庭」は、入場無料で楽しめる日本庭園です。この庭園は、明治時代の著名な俳人、正岡子規の奈良滞在にまつわる歴史と、子規自身の庭園に対する理想が融合した、静謐で美しい空間です。

子規と奈良

1895年（明治28年）、日清戦争従軍記者として中国にいた正岡子規は、帰国途上で喀血。療養後、故郷の松山に帰る途中、親友の夏目漱石から借りた10円を携え、10月26日から29日にかけて奈良に滞在しました。この短い奈良滞在中に、子規は多くの句を詠み、その中には有名な『柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺』も含まれています。滞在中には、老舗旅館「對山樓」に逗留し、その様子を描いた随筆なども残しています。

庭園の誕生

「對山樓」跡地は現在、日本料理店となっていますが、その一角には、子規も目にしたであろう柿の古木が現存しています。この古木の保存を機に、子規の奈良滞在を顕彰する動きが高まり、子規の子孫らの尽力により、2006年（平成18年）秋に「子規の庭」が開園しました。

毎年9月19日の追悼法要

毎年9月19日、子規の命日（糸瓜忌）には、「子規の庭」で子規を偲ぶ法要が執り行われています。子規の生涯と作品をしのび、多くの俳句愛好家や地元住民が訪れる重要な行事となっています。

子規の理想を反映した庭園デザイン

子規は23歳の頃、随筆「筆まかせ」の中で、将来書斎と庭園を持つならばという理想の計画を記しています。「秋の野草を植え、皆野性の有様にて乱れたるを最上とする」「すべて日本風の雅趣を存すべし」という子規のこだわりが、「子規の庭」のデザインコンセプトに反映されています。

庭園の見どころ

トヨカ柿: 庭園のシンボル的存在である古木。樹齢百数十年を超え、渋柿から甘柿へと変化する珍しい品種です。子規が奈良滞在中に目にしたであろう柿の木は、この庭園の創出のきっかけとなりました。
句碑: 「對山樓」を詠んだ子規の句碑が建立されています。子規の故郷である愛媛県西条市産の伊予青石を使用し、柿の絵が中心に彫られています。この句碑は、子規の奈良滞在の記憶を鮮やかに呼び起こします。

アクセス

近鉄奈良駅からバスでアクセス可能です。静かな住宅街の中に位置し、都会の喧騒を離れた、落ち着いた雰囲気の中で、ゆっくりと自然と歴史に浸ることができます。

まとめ

「子規の庭」は、正岡子規の生涯と作品、そして彼が理想とした庭園の空間が融合した、貴重な場所です。無料で開放されているため、誰でも気軽に訪れ、歴史と自然に思いを馳せることができます。奈良を訪れた際には、ぜひ訪れてみてください。

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