孔門十哲

孔門十哲：孔子の優れた弟子たち

孔門十哲とは、孔子の弟子の中で最も優れた10人を指す呼称です。「孔門の十哲」や「四科十哲」とも呼ばれています。彼らは、徳行、言語、政事、文学という4つの分野から選抜されたとされていますが、その選定方法や基準については、様々な解釈が存在します。

選定の謎：孔子による選出か、それとも？

孔門十哲の選定は、孔子自身が行ったものなのか、それとも後世の人々によるものなのか、議論の的となっています。十哲に挙げられている人物の名前が、諱ではなく字（あざな）である点が、後世の選出説を支持する根拠となっています。孔子であれば、弟子を呼ぶ際には字ではなく諱を用いるのが一般的であったためです。

さらに、曾参（曾子）や子張といった、孔子の重要な弟子たちが十哲に含まれていない点も、謎を深めています。ある説では、十哲は孔子と共に陳や蔡を巡った弟子たちの中から選ばれたと主張しています。この説は、選定基準が特定の出来事や状況に限定されていた可能性を示唆しています。

四科十哲：それぞれの分野を代表する弟子たち

孔門十哲は、以下の4つの分野から、それぞれ2名ずつ選出されているとされています。

徳行：高い道徳性を備え、孔子の教えを忠実に実践した弟子たち。顔淵（顔回）、閔子騫、冉伯牛、仲弓などが挙げられます。
言語（弁舌の才）：雄弁な話術と優れた表現力を持つ弟子たち。宰我、子貢などがその代表です。
政事：政治や行政に才能を発揮した弟子たち。冉有、季路（子路）などが挙げられます。
文学（学問の才）：学問に秀で、孔子の教えを深く理解し、発展させた弟子たち。子游、子夏などがその代表です。

それぞれの分野に選ばれた弟子たちは、孔子の教えを様々な角度から実践し、その発展に貢献しました。彼らの業績や言行は、『論語』などを通して後世に伝えられ、儒教思想の確立と発展に大きな影響を与えました。

十哲を超えて：孔門十二哲、そして四聖

孔門十哲は、時代とともにその構成メンバーや解釈に変化が見られます。唐の時代には、曽子が十哲に加えられ、孔門十二哲という考え方や祀り方が誕生しました。南宋時代には、顔回、曾子、子思、孟子の四聖を特別扱いし、顔回に代えて子張を十哲に加える考え方が広まりました。清朝時代には、さらに朱子と有若を加えた十二哲という考え方もあります。このように、孔門十哲は、時代や思想の変化とともに、様々な解釈や拡張が加えられてきました。

孔門十哲を題材にした作品

孔門十哲の弟子たちは、数多くの作品の中で題材として取り上げられています。例えば、小説『宰予　一　孔子から不仁な者と呼ばれた弟子の物語』（古林青史著）では、宰予という弟子が中心に描かれています。この作品は、孔子の教えと弟子たちの葛藤、そして人間的な魅力を描き出し、新たな視点から孔門十哲の世界を紹介しています。

まとめ

孔門十哲は、孔子の教えを体現し、その発展に貢献した優れた弟子たちです。彼らの選定基準や構成メンバーについては諸説ありますが、それぞれの分野で卓越した才能を発揮した人物たちが名を連ねています。後世においても、孔門十哲は儒教思想の象徴として、人々に多大な影響を与え続けています。彼らの生き方や思想は、現代社会においても学ぶべき点が多く、今後も研究が続けられるでしょう。

もう一度検索