孝端顕皇后

孝端顕皇后（こうたんけんこうごう）は、明朝第14代皇帝である万暦帝の皇后です。彼女は王氏の出身で、諱を喜姐（きしゃ）といいました。順天府（現在の北京市）の出身で、もともとは紹興府余姚県を本籍とする文思院副使の王偉の長女として生まれました。

1577年、彼女は選抜されて後宮に入り、翌1578年2月に皇后に冊立されました。この際、父の王偉は永年伯に封じられ、その家は栄誉に包まれました。

孝端顕皇后は、真紅の衣服を好んだと伝えられています。後宮の主として、その性格は聡明かつ謹厳であり、非常に有能であったと評されています。彼女は、万暦帝の文書の収集・整理に尽力し、皇太后への孝行を欠かさず、皇室を支えました。また、太子である朱常洛（後の泰昌帝）を支持し、皇帝の寵妃である鄭皇貴妃に対しても寛容な態度で接しました。彼女自身は皇帝からの寵愛を必ずしも受けてはいませんでしたが、その優れた手腕によって皇后としての地位を盤石なものとしました。

しかし、その一方で、彼女には負の側面もありました。後年、太監の劉若愚が著した『酌中志』によれば、彼女は鬱憤を晴らすために、宮女や太監たちを虐待し、時には折檻して死に至らしめることもあったとされています。これらの行為は、彼女の厳格な性格と、皇后としてのストレスの表れであったかもしれません。

孝端顕皇后は、万暦帝より4ヶ月早く、1620年に崩御しました。彼女の死後、孝端貞恪荘恵仁明媲天毓聖顕皇后という長い諡号が贈られました。彼女は、万暦帝の陵墓である定陵に、次代の皇帝の生母である王皇貴妃と共に合葬されました。彼女の生涯のライバルであった鄭皇貴妃は、皇后の地位を狙ったものの失敗に終わり、金山への埋葬を余儀なくされました。

孝端顕皇后は、中国史上、在位期間が最も長い皇后であり、その在位期間は42年に及びます。彼女は、その長い在位期間を通じて、明朝の後宮を統括し、大きな影響力を持ちました。彼女が亡くなった後、彼女を慕い、その死を惜しむ声が後宮で多く聞かれたと伝えられています。

彼女の生涯は、明朝後期の歴史を語る上で欠かせない要素の一つであり、彼女の行動は後の歴史にも大きな影響を与えました。

子女

朱軒媖（栄昌公主）

脚注

『明史』
『明神宗実録』
『酌中志』
『万暦野獲編』
『万暦起居注』

登場作品

* 「万暦首輔張居正」(中国・2010年、日本未公開) 演：楼兪

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