孤狼の血

『孤狼の血』シリーズについて

概要

『孤狼の血』（ころうのち）は、柚月裕子による長編警察小説のシリーズで、全3作から構成されています。第一作『孤狼の血』は2014年から2015年にかけて『小説 野性時代』に連載され、その後KADOKAWAから単行本や文庫本として刊行されました。物語は1988年の広島を舞台にし、暴力団と警察の抗争、またその背後にある人間ドラマを描いています。なお、この作品は第69回日本推理作家協会賞を受賞しています。

作品の詳細

第一作: 孤狼の血

物語は昭和63年の広島に始まり、呉原東署のマル暴刑事である大上が中心です。大上の下には新米刑事の日岡が配属され、彼らは暴力団対策に携わります。尾谷組と加古村組の抗争が激化する中、大上は一件の失踪事件から加古村組を壊滅させる計画を練ります。しかし、大上の捜査は恐喝や暴行など、非道な手法に依存しています。日岡は彼の行動に疑念を抱きつつも、徐々に大上の正義に触れていくことになります。物語の転機となるのは、大上の不審な失踪と、彼が残した「ノート」による警察内の不祥事の告発です。この事件を通じ、日岡は大上の信念を受け継ぎ、抗争の終息を目指します。

第二作: 凶犬の眼

舞台は平成2年に移り、尾谷組と五十子会の全面抗争を描いています。日岡は左遷され、田舎の駐在所で静かな日々を送っていますが、暗殺犯の国光との出会いをきっかけに再び抗争の渦に巻き込まれます。国光は日岡に対し、自分を逮捕するよう要求し、二人の間に不思議な絆が形成されます。彼らの果たすべき約束と仁義を重んじる日岡は、抗争を乗り越えようと奮闘します。

第三作: 暴虎の牙

この作品では、プロットが昭和57年に遡り、不良たちが繰り広げる抗争を描いています。沖が中心となり、広島での権力を奪取しようとする姿が描写されています。沖はマル暴の大上と知り合い、大上の援助を得ながら仲間たちとの抗争を続けます。暴対法施行後、厳しくなる環境の中、沖たちは再結成し、18年前の裏切り者に立ち向かう決意をします。

映画化とその影響

このシリーズは、映画化もされており、2018年には『孤狼の血』が公開されました。そして2021年には続編『孤狼の血 LEVEL2』が続き、いずれも高い評価を受けています。それにあたって、強烈なキャラクターと緊迫した展開が視覚的に描かれることで、多くの支持を得ています。シリーズ全体としては、暴力団との駆け引きや、人間関係の葛藤が重層的に描かれており、読者や視聴者の興味を引き続けています。

創作背景

柚月裕子は、岩手県釜石市出身で、特有の気性の激しさに影響を受けて作品を執筆しています。特に、広島の歴史や文化を活かしたリアリティと、登場人物の人間味が作品の魅力を増しており、読者の心を掴んで離しません。興味深いのは、彼女自身が取材を通じて得た知識や感情が反映されている点です。現在も幅広い評価を受け続けるこのシリーズは、読者に強烈な印象を与え、記憶に残る作品として機能しています。

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