学校週5日制

学校週5日制とは

学校週5日制とは、学校の授業日を週5日とする制度のことで、学校週休2日制とも呼ばれます。この制度は、子どもたちの学習環境だけでなく、教員の働き方や社会全体のライフスタイルにも深く関わっています。本稿では、日本における学校週5日制の導入過程、その背景にある議論、そして海外の事例について詳しく解説します。

日本における学校週5日制の歴史

占領下の週5日制

学校週5日制の議論は、戦後の占領下で始まりました。

1947年: 関東地区軍政部の教育課長が「日本の公立学校の週5日制」というパンフレットを作成し、各県に配布しました。これは、日本の教育制度改革の一環として、アメリカの教育理念を導入しようとした動きでした。
1948年: 秋田県、滋賀県、長野県で試験的に導入されました。
1949年: 山形県、福島県、千葉県、熊本県でも導入されました。特に熊本県では、1949年から1951年まで実施され、教員の研修時間の確保や子どもの自主性を育むことを目的としていました。しかし、家庭からの反対意見や学力低下の懸念などから、1951年には廃止されました。この時期の週5日制は、アメリカ軍の意向が強く反映されたものであり、必ずしも全国的に受け入れられたわけではありませんでした。

1970年代以降の議論

その後、学校週5日制は長らく忘れ去られていましたが、1970年代に入り、再び議論が活発化しました。

1972年: 日本教職員組合が学校週5日制を提起し、研究会を設けました。
1973年: 文部大臣が学校週5日制に踏み切る発言をしました。
1975年: 日本教職員組合が「隔週学校五日制」の試案を発表しました。

しかし、1980年代には、臨時教育審議会が学校週5日制への移行を提言しましたが、学習指導要領には盛り込まれませんでした。この背景には、当時の日本が貿易摩擦を抱えており、国際的な労働時間短縮の圧力が高まっていたという事情があります。政府は、労働時間の短縮を進める一方で、教育現場では慎重な姿勢を崩しませんでした。

公立学校における学校週5日制の導入

1992年以降、公立学校で学校週5日制が段階的に導入されました。

1992年: 毎月第2土曜日が休業日になりました。
1995年: 第2土曜日と第4土曜日が休業日になりました（隔週学校週5日制）。
* 2002年: 毎週土曜日が休業日となり、完全学校週5日制が導入されました。この制度は、学校教育法施行規則によって法的拘束力を持つようになりました。

しかし、導入後も、一部で土曜日の授業が行われたり、制度の見直しが議論されました。2003年以降、民主党がマニフェストで学校5日制の見直しを掲げたり、安倍政権が学力向上のために土曜日の補習を検討したりしましたが、結局見直されることはありませんでした。

2010年代に入ると、東京都や大阪市などの一部地域で、学力向上や地域連携を目的として、条件付きで土曜授業が復活する動きも見られました。

学校週5日制の実施状況

公立学校

公立学校では、2002年度以降、学校週5日制が定着していますが、休業日の授業も条件付きで容認されています。特に2011年度以降、脱ゆとり教育が実施され、授業時間が増加する中で、土曜日の授業を行う学校が増えています。

私立学校

私立学校では、学校教育法施行規則により、休業日は学校側で判断できます。そのため、学校週5日制を導入している学校もあれば、週6日制を続けている学校もあります。特に私立の進学校では、学力低下を懸念して週6日制を維持し、長期休暇を長く設定している学校も見られます。

欧州における学校週5日制

ドイツ

ドイツでは、州によって制度が異なり、週5日制と週6日制の学校が混在しています。また、完全週5日制の学校もあれば、月2回の週5日制の学校もあります。さらに、基礎学校とギムナジウムで対応が異なる場合もあります。

フランス

フランスでは、1880年代に公立初等学校で学校5日制が成立しました。当初は木曜日が休日でしたが、1972年以降は水曜日が休日となっています。また、一部の小学校では、土曜日を休日とする完全学校4日制を採用しています。

学校週5日制の意義と課題

学校週5日制は、子どもたちの学習時間の確保、教員の働き方改革、地域社会との連携など、様々な側面で議論されてきました。しかし、完全導入後も、学力低下の懸念や長期休暇の短縮といった課題が指摘されています。今後、学校週5日制は、教育制度全体の中で、どのような役割を担っていくのか、引き続き議論が必要です。

まとめ

学校週5日制は、単なる学校の休業日数の問題ではなく、教育のあり方、子どもたちの成長、社会のライフスタイルに深く関わる問題です。その歴史を振り返ることで、制度の変遷、導入の背景、そして今後の課題を理解することができます。この制度の意義と課題を理解することは、より良い教育環境を構築する上で重要な視点となるでしょう。

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