学生武装隊

学生武装隊（がくせいぶそうたい）

概要

学生武装隊（ビルマ語: ကျောင်းသားလက်ရုံးတပ်တော်、英語: Student Armed Force、略称: SAF または ကလတ）は、ミャンマーにおける抵抗運動の一翼を担う武装組織です。その名の通り、主に学生を主体として構成されており、2021年の軍事クーデターによって生まれた政治的な空白と市民への弾圧に対抗するため結成されました。国軍の支配に対抗し、民主的な社会の実現を目指すレジスタンス勢力の一つとして位置づけられています。

設立経緯

2021年2月にミャンマー国軍がクーデターを決行し、アウンサンスーチー氏率いる民主的な政権を打倒したことは、国内に広く深い絶望と怒りをもたらしました。これに対し、全国各地で軍事政権への非暴力的な抵抗運動（市民不服従運動、CDM）が勃発しましたが、国軍による激しい弾圧に直面します。特に都市部、中でもヤンゴンの学生たちはこの弾圧の標的となり、多くの者が身の危険を感じる状況となりました。こうした背景の中、非暴力抵抗の限界を感じ、あるいは身を守り、積極的に軍事政権に対抗する手段を取る必要性を感じた学生たちが現れ始めました。

ヤンゴンの学生組合は、国軍に対抗するための武装組織の必要性を痛感し、その実現に向けて行動を起こしました。彼らはミャンマー西部ラカイン州を拠点とする少数民族武装勢力であるアラカン軍（AA）が実効支配する地域へと向かいました。そこで、アラカン軍の協力と支援を得て、基礎的な軍事訓練を受ける機会を得たのです。学生たちは、都市での生活とは全く異なる環境で、戦闘やゲリラ戦の技術といった実践的な訓練を積みました。この訓練を経て、武装抵抗の意思と能力を固めた学生指導者たちは、2021年4月27日に正式に「学生武装隊」の設立を発表しました。設立当初の指導者は22名であったと伝えられており、これは学生たちの強い意志と、武装抵抗という新たな段階へ移行する決意を示すものでした。組織はアラカン軍からの様々な面での支援を受けつつ、実働部隊としての体制を整えていきました。

活動と動向

学生武装隊は設立以来、ミャンマー各地、特に活動が可能な地域において、軍事政権の支配に対する抵抗活動を展開しています。その具体的な活動内容や規模については、組織の性質上、詳細が常に明らかになるわけではありませんが、国軍部隊との衝突に関与していることが報告されています。

特筆すべき出来事として、2022年1月24日に発生した国軍部隊との交戦が挙げられます。この日、学生武装隊は、およそ60名規模とされるミャンマー国軍の縦隊から攻撃を受けました。この戦闘は激しいものとなり、学生武装隊側には犠牲者が出たとされています。組織の発表によれば、この国軍による攻撃によって、少なくとも9名の隊員が命を落としたとのことです。この事実は、学生武装隊が実際に前線で国軍と武力衝突しており、深刻な犠牲を払いながら抵抗を続けている現状を示しています。このような衝突は、ミャンマー全土で展開されている国軍と市民抵抗勢力との間の紛争の一例であり、学生武装隊もまた、その渦中にあることが分かります。

また、学生武装隊には、一般市民の間で広く知られた人物も参加しています。例えば、ミャンマーで女優として活動していたハニー・ヌウェウー氏も、学生武装隊に身を投じ、組織内で上級士官という重要な役割を担っていることが確認されています。彼女のように、著名な立場の人物が抵抗組織に参加していることは、クーデター後のミャンマーにおける市民の強い反軍政の意志と、様々な立場の人々が抵抗運動に加わっている現実を象徴しています。

学生武装隊は、ミャンマーの民主化運動において、特に若い世代や学生が武装抵抗という手段を選ばざるを得なくなった状況を示す存在です。彼らの活動は、国軍による抑圧に対する直接的な対抗であり、民主主義の回復を願う市民の希望の一つとも見られています。しかし同時に、その活動は常に危険と隣り合わせであり、多くの困難に直面しています。今後のミャンマー情勢において、学生武装隊のような市民武装組織がどのような役割を果たしていくかは、依然として注視されるべき点です。

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