学習院大学ヨット遭難事故

学習院大学ヨット遭難事故

1964年3月20日、学習院大学のヨット部が参加予定だったレースへ向かう途中、悲劇的な遭難事故が発生しました。この事故では、若い学生5名が命を失うという痛ましい結果となりました。

事故の発生

事故は、お昼近くの11時30分に起こりました。この日は強風と波浪に関する注意報が出ており、海上の状況は非常に厳しいものでした。学習院大学のヨット部の学生たちは、横浜市中区の横浜ヨットハーバーから油壺へ向かう「翔鶴号」に乗り込みましたが、予定通りに油壺に到着することができませんでした。事故の翌日、他のヨットが無事に目的地に到着していることから、関係者は翔鶴号の遭難を懸念し、海上保安本部に通報しました。

その後、海上保安部は捜索活動を展開し、海上自衛隊や航空自衛隊も協力して捜索に当たりました。翔鶴号は全長約10メートルの小型ヨットで、3馬力の補助エンジンを搭載していました。関係者は初め、荒天のために港寄りの安全な場所に避難しているのではないかと考えましたが、早朝に地元漁師が翔鶴号の浮き具や救命胴衣を発見したことで、事態は深刻化しました。

遺体の発見

事故発生から数日後の22日には、最初の遺体が発見され、その後も遺体が次々に見つかりました。全員の遺体が発見されるまでの過程は困難を極めるものでした。特に、発見された遺体はすべて救命胴衣を着用しておらず、事故の詳細が疑問視されました。事故当時、関東地方は南西からの強風に見舞われており、平均風速は21メートルに達するなど、その危険な状況を物語っています。

船体の引き上げ

事故から5日後、引き上げ作業が始まりました。漁船の支援を受けたサルベージ作業によって、翔鶴号は船体が浮上しました。検証の結果、船体の下部に大きな傷はあったものの、重要な穴はなく、上部の状態も良好でした。しかし、セールが適切に操作されておらず、エンジンのトラブルのために航行能力を失っていたことが示唆されました。

また、海図が船内から見つかりましたが、その内容には何も記載されていないことが分かり、航行中に現在位置の確認が怠られていたことが疑われました。

社会的影響

この事故に関しては、犠牲者の中に有名な政治家や自衛官の子女が含まれたこともあり、捜索が早急に行われた背景には特別な事情があったのではないかという批判もありました。また、当時の海図に何の記載もなかったことは、事故の原因として危険な航行の管理不足があったことを示しています。

この悲劇を通じて、海上での安全意識の重要性が改めて認識されることになりました。

もう一度検索