孫運璿

孫運璿：台湾経済発展の礎を築いた政治家・技術官僚

孫運璿（そん うんせん、1913年11月10日 - 2006年2月15日）は、中華民国（台湾）の政治家であり、卓越した技術官僚でした。激動の時代に台湾の経済発展に大きく貢献し、その功績から「台湾経済的推手」と称えられています。

生涯

山東省に生まれた孫運璿は、ハルビン工業大学校で工学を学びました。日中戦争期には、発電所の建設や移設に尽力し、その才能を開花させます。国共内戦後、台湾に渡り、台湾電力の復旧に携わりました。当時、連合国軍の空襲により台湾の電力供給システムは壊滅的な状況でしたが、孫運璿は日本人技術者の協力を得ながら、わずか5ヶ月で島内の電力供給の80％を復旧させるという偉業を成し遂げました。

その後、台湾電力総経理、交通部長、経済部長、行政院長といった要職を歴任し、台湾の経済発展に大きく貢献します。

十大建設の推進

1970年代には、交通部長として「十大建設」を推進。北迴線、中正国際空港（現：台湾桃園国際空港）、台中港、中山高速公路など、現在の台湾のインフラを支える重要なプロジェクトを主導しました。

工研院の設立と半導体産業の育成

経済部長時代には、台湾経済の発展を見据え、科学技術の振興に尽力しました。韓国の科学技術院を参考に、官民共同で工業技術研究院（工研院）を設立し、海外で活躍する優秀な人材の帰国を促進しました。また、半導体産業を台湾の基幹産業と位置づけ、米国RCAからの技術移転を主導。新竹科学工業園区を設立し、台湾が世界有数の集積回路生産地となる基礎を築きました。

行政院長として

1978年、行政院長に就任した孫運璿は、台湾の観光資源と天然資源の保護を提唱し、「台湾地区総合開発計画」を策定。玉山、墾丁、太魯閣渓谷などを国家公園予定地に指定し、自然保護政策を推進しました。また、米台断交という困難な状況下で、海外在住の台湾人を帰国させ、民心の安定に努めました。

晩年

1984年、脳溢血で倒れましたが、その後も車椅子で公の場に姿を現し、台湾の発展を見守りました。2006年、92歳で逝去。その功績を称えられ、国葬が執り行われました。

孫運璿科技・人文紀念館

晩年を過ごした台北市の旧邸は、「孫運璿科技・人文紀念館」として一般公開されています。館内では、孫運璿の生涯や業績に関する展示が行われており、台湾の経済発展に貢献した彼の足跡を辿ることができます。

孫運璿は、台湾の経済発展の基礎を築いただけでなく、科学技術の振興、人材育成、自然保護など、多岐にわたる分野で台湾の発展に貢献しました。その先見性と実行力は、現代の台湾社会においても高く評価されています。

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