宇宙ジェット

宇宙ジェットとは、重力天体の周辺から、細く絞られたプラズマガスなどが高速で噴出する現象です。多くの場合、双方向に噴出しますが、一方向のみの場合も観測されます。このジェットは、星の誕生からブラックホールの活動まで、宇宙の様々な場所で発生しており、天体活動のエネルギー源や進化を解明する上で重要な役割を果たしています。

ジェットの発生原理

宇宙ジェットの発生は、中心となる重力天体の周りで激しい天体活動が起こることに起因すると考えられています。その中心となる天体は、原始星、コンパクト星（中性子星や白色矮星）、そして超大質量ブラックホールなど、多岐に渡ります。

星形成時のジェット

星が誕生する過程では、星間分子雲の中でガスや塵が重力によって集まり、中心部で原始星が形成されます。この時、集まってきた物質の一部は、回転する円盤状のガス雲（降着円盤）を形成し、その円盤の中心に引き寄せられた物質の一部が、円盤の軸方向に双方向へジェットとして噴出します。この初期段階のジェットの速度は、毎秒10数km程度と考えられています。このジェットは、星の形成過程における物質の再分配に重要な役割を果たすと考えられています。

ハービッグ・ハロー天体

星形成時に噴出するジェットの兆候として、ハービッグ・ハロー天体（HH天体）というものがあります。これは、ガスジェットが周囲の星間ガスと衝突し、その衝撃で輝く天体で、暗黒星雲の周辺で観測されます。HH天体は、星形成領域におけるガスジェットの活動を視覚的に捉えることができる貴重な観測対象です。

ブラックホールに付随するジェット

ブラックホールは、周囲の物質を強力な重力で吸い込みますが、その際、降着円盤と呼ばれるガス雲を形成します。降着円盤に引き寄せられた物質の一部は、円盤の軸方向に、光速に近い速度でジェットとして噴出します。クエーサーで観測されるジェットも、このメカニズムによって発生していると考えられています。クエーサーのジェットの中には、見かけ上、光速を超える速度で運動しているように見えるものがあり、これらは超光速クエーサーと呼ばれています。これは、ジェット自体の運動速度と、クエーサーの固有運動が組み合わさって生じる現象です。また、M87銀河の中心にある超大質量ブラックホールからも、高エネルギーのプラズマジェットが観測されています。

宇宙ジェットの観測

宇宙ジェットは、電波、赤外線、可視光、X線、ガンマ線など、様々な波長で観測されています。これらの観測を通して、ジェットの構造、速度、成分、エネルギーなどを調べることができます。特に、電波観測は、ジェットの遠くまで広がる様子を捉えるのに有効であり、VLBI（超長基線電波干渉法）などを用いて、ジェットの微細な構造を詳細に解析することができます。

まとめ

宇宙ジェットは、宇宙の様々な場所で発生するダイナミックな現象であり、星の形成からブラックホールの活動まで、宇宙における様々な天体活動と密接に関わっています。ジェットの研究は、宇宙の進化を理解する上で不可欠であり、今後も、新たな観測技術や理論研究の発展が期待されています。

[写真(1)]宇宙ジェットの例（イメージ）
[写真(2)]ハービッグ・ハロー天体。HH 30（上左）、HH 34（上右）、HH 47（下）。

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