超大質量ブラックホール

超大質量ブラックホールとは

超大質量ブラックホール（SMBH）は、太陽の10万倍から100億倍という途方もない質量を持つブラックホールです。これらの巨大な天体は、銀河の中心に位置することが多く、銀河の進化に大きな影響を与えていると考えられています。

特徴

超大質量ブラックホールには、質量が小さいブラックホールとは異なる特徴があります。

平均密度の低さ: 超大質量ブラックホールの平均密度は、非常に低い可能性があります。これは、シュヴァルツシルト半径（事象の地平面の半径）が質量に比例して大きくなる一方で、密度は半径の3乗に反比例するためです。つまり、質量が増えるほど体積がより急速に増加し、結果として平均密度が低下します。ただし、これは数学的な定義から導かれるものであり、物理的な性質を直接的に表しているわけではありません。
弱い潮汐力: 事象の地平面付近でも潮汐力が小さいです。これは、中心の特異点までの距離が非常に遠いため、宇宙飛行士がブラックホールに落下しても、スパゲッティ化現象が起こるまでにかなり深く進む必要があります。

形成

超大質量ブラックホールの形成には、いくつかのモデルが提唱されています。

降着による成長: 星サイズのブラックホールが、周囲の物質をゆっくりと降着させながら成長するというモデルです。これは、比較的単純で理解しやすいモデルですが、短時間で超大質量ブラックホールを形成するには時間がかかりすぎると考えられています。
相対論的星の崩壊: 巨大な分子雲が、太陽の10万倍以上の質量を持つ相対論的星に崩壊するというモデルです。この星の中心核で電子-陽[[電子]]ペアが生成され、質量を放出してブラックホールに崩壊すると考えられています。

超大質量ブラックホールの形成で難しいのは、小さな体積に大量の物質を詰め込む必要がある点です。そのためには、物質の角運動量が小さくなければなりません。降着の過程では角運動量が持ち込まれるため、ブラックホールの成長が阻害され、降着円盤が形成される要因にもなります。

構造

超大質量ブラックホールから噴き出すプラズマジェットの構造は、観測によって明らかにされつつあります。また、近傍の活動銀河の中心核に対する水メーザーのドップラー効果の測定から、銀河の中心に物質が密集していることが示唆されています。これは、ブラックホールが短時間で物質を吸収した結果と考えられています。遠方の活動銀河では、広幅輝線の幅が、事象の地平面近くのガス運動の観測に利用され、スペクトル線の変動を調べることで、ブラックホールの質量や回転を測定する手法（Reverberation mapping）が用いられています。

銀河中心の超大質量ブラックホール

銀河の中心には、超大質量ブラックホールが存在することが確認されています。

天の川銀河: 我々の銀河系（天の川銀河）の中心にあるいて座Aは、約410万太陽質量の超大質量ブラックホールです。その質量は約8.154572 × 10^36 kgと計算されており、シュヴァルツシルト半径は0.08auになります。この発見に貢献した研究者は、ノーベル物理学賞を受賞しました。
その他の銀河: 天の川銀河以外にも、アンドロメダ[[銀河]]やM32など、多くの銀河で超大質量ブラックホールの存在が確認されています。M87の中心にあるブラックホールは、約65億太陽質量という巨大さです。また、活動銀河やクエーサーでは、ブラックホールに落ち込むガスから放出される大量の放射線が観測されています。

超大質量ブラックホールの質量と銀河形成

超大質量ブラックホールの質量と、銀河の回転楕円体の質量には相関関係があり、ブラックホールの質量と回転楕円体の速度分散にはより強い相関が見られます。この相関関係は、宇宙物理学における未解決問題の一つです。銀河とブラックホールは、ビッグバンから数億年後に共進化を始めたと考えられていますが、どちらが先かについてはまだ議論の余地があります。暗黒物質が、このモデルの不可欠な要素であると考えられています。

連星系ブラックホール

複数の超大質量ブラックホールが、連星系を形成している銀河も存在します。例えば、銀河4C 37.11の中心には、2つの超大質量ブラックホールがあり、合体する際には強い重力波を発生させると考えられています。連星系ブラックホールは、銀河の合体の際に形成されやすいとされています。

例として、OJ 287は太陽質量の180億倍、NGC 4889の中心には太陽質量の210億倍のブラックホールが確認されています。さらに、Abell 1201 BCGの中心には太陽質量の327億倍のブラックホールが存在すると推定されています。最も巨大なものは、Tonantzintla 618やPhoenix Aの活動銀河核に存在するもので、それぞれ太陽質量の600億倍、1000億倍と推定されています。

まとめ

超大質量ブラックホールは、宇宙における最も巨大で神秘的な天体の一つです。その形成や銀河との関係は、現在も活発に研究が進められています。今後の研究により、これらの巨大ブラックホールの謎が解き明かされることが期待されます。

参考資料

ISAS 塵に埋もれた活動的な超巨大ブラックホール - 赤外線天文衛星「あかり」
Black Holes: Gravity's Relentless Pull
Images of supermassive black holes
NASA images of supermassive black holes
The black hole at the heart of the Milky Way
ESO video clip of orbiting star - ウェイバックマシン
Star Orbiting Massive Milky Way Centre Approaches to within 17 Light-Hours - ウェイバックマシン
Images, Animations, and New Results from the UCLA Galactic Center Group
Washington Post article on Supermassive black holes
* A simulation of the stars orbiting the Milky Way's central massive black hole

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