宇宙損害責任条約

宇宙物体による損害についての国際的責任に関する条約（宇宙損害責任条約）

宇宙損害責任条約は、宇宙開発における国際的な責任関係を明確化するために定められた国際条約です。正式名称は「宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約」といい、1972年に発効しました。この条約は、宇宙法を構成する5つの主要な条約の一つであり、宇宙条約（1967年発効）の規定を具体化するものとして位置づけられています。

条約の目的と概要

この条約は、宇宙物体が引き起こした損害に対して、打ち上げ国がどのような責任を負うかを定めています。その主な内容は、以下の通りです。

無過失責任の原則: 打ち上げ国は、自国の宇宙物体が地上で損害を引き起こした場合、または飛行中の航空機に損害を与えた場合、過失の有無にかかわらず損害賠償責任を負います。
連帯責任の原則: 複数の国が共同で宇宙物体を打ち上げた場合、これらの国は、引き起こされた損害に対して連帯して責任を負います。
損害賠償請求: 損害を被った国は、打ち上げ国に対して損害賠償を請求することができます。

条約の主な内容

損害に対する無過失責任原則（第2条、第3条）

打ち上げ国は、自国の宇宙物体が地表において引き起こした損害、又は飛行中の航空機に与えた損害につき無過失責任を負います。損害が地表以外の場所において引き起こされた場合には、その損害が自国の過失又は自国が責任を負うべき者の過失によるものであるときに限り責任を負います。

第三国への損害に対する連帯責任原則（第4条）

損害が、1の打上げ国の宇宙物体・物体内の人・財産に対して、他の打上げ国の宇宙物体により地表以外の場所において引き起こされ、その結果、損害が第三国に対して引き起こされた場合には、これらの打上げ国は、当該第三国に対し、次に定めるところにより連帯して責任を負います。

損害が、当該第三国に対して地表において又は飛行中の航空機について引き起こされた場合には、打上げ国は、当該第三国に対して無過失責任を負う。
損害が、当該第三国の宇宙物体・物体内の人・財産に対して地表以外の場所において引き起こされた場合には、打上げ国は、当該第三国に対し、いずれか一方の打上げ国又はいずれか一方の打上げ国が責任を負うべき者に過失があるときに限り、責任を負う。

共同打上げに関する連帯責任原則（第5条）

2以上の国が共同して宇宙物体を打上げる場合には、これらの国は、引き起こされるいかなる損害についても連帯して責任を負います。

無過失責任の免除（第6条）

損害の全部又は一部が、請求国の重大な過失又は作為若しくは不作為に引き起こされたことを打上げ国が証明した場合には、その限度において無過失責任が免除されます。ただし、打上げ国の活動であって、国際法（国際連合憲章、宇宙条約を含む）に適合しないものにより損害が引き起こされる場合には、いかなる免責も認められません。

適用除外の規定（第7条）

この条約の規定は、打上げ国の宇宙物体により次の者に対して引き起こされた損害については適用されません。

打上げ国の国民
宇宙物体の運行に参画している外国人

賠償請求に関する原則（第8条）

損害を被った国は、当該損害の賠償につき、打上げ国に対し請求を行うことができ、被損害国が請求を行わない場合には、他の国が、その領域において被った損害につき、打上げ国に対し請求を行うことができます。

締約国と日本の状況

2012年12月12日時点で、87カ国が批准しています。日本は署名していませんが、1983年6月20日に加入しています。

関連条約

宇宙条約 (1967年)
宇宙救助返還協定 (1968年)
宇宙物体登録条約 (1975年)
* 月協定 (1979年)

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