宇宙法

宇宙法とは

宇宙法は、宇宙空間とその利用を規律する国内法および国際法の総称です。国際宇宙法は、主に国際連合宇宙空間平和利用委員会（COPUOS）の法律小委員会が所掌し、1967年の宇宙条約を基本として「宇宙5条約」と呼ばれる5つの条約を中心に構成されています。

宇宙法の概要

国際宇宙法の特徴は、国家主権が大きく制限されている点です。諸条約や国連総会決議を中心に構成され、慣習法の要素は少ないとされています。これは、宇宙開発技術の急速な発展に伴い、法整備が急務であったこと、また当初は宇宙活動を行う国が限られていたため、条約の制定が比較的容易であったことが理由として挙げられます。

なお、宇宙空間と国家主権が及ぶ領空との境界は、国際法上明確には定義されていません。

宇宙法の歴史

1957年10月、ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げ、翌58年1月にはアメリカもエクスプローラー1号を打ち上げるなど、1950年代から人類の宇宙活動は急速に進展しました。

宇宙空間では、当初から実用目的の人工衛星や軍事利用が想定されていたため、法秩序の形成が急務となりました。1959年には国連宇宙空間平和利用委員会が設置され、米ソの宇宙開発競争の中で条約作成作業が急ピッチで進められました。いくつかの原則宣言の採択を経て、1966年には宇宙活動の基本原則を規定した宇宙条約が国連で採択されました。この条約により、探査・利用の自由、領有の禁止、平和利用といった原則が確立されました。

1970年代に入ると、米ソ以外にも多くの国が宇宙開発に参入し、通信衛星などの商業利用が推進されました。1973年には国際電気通信衛星機構（インテルサット）が設立され、各国間で通信衛星の運用管理が行われるようになりました。しかし、静止軌道や通信衛星の利用をめぐり新たな対立も生じるようになり、特に直接放送衛星による番組送信やリモートセンシングにおける規制の是非については、国連で原則が採択されたものの、条約化には至っていません。

近年では、宇宙の商業化がさらに加速し、民間の参入も増加しています。そのため、宇宙活動に関する国内法の整備も不可欠となっています。国内法には、宇宙条約第6条で締約国に求められる非政府主体の活動に対する許可と継続的監督を目的としたもの、宇宙活動の持続可能性を確保するための自主的な規制（スペースデブリ対策など）、宇宙条約の解釈を明確化することで国際的な規範形成を先導するもの、そして各国の宇宙政策の基礎となる枠組みを定めるもの（日本の宇宙基本法など）があります。また、国家間の規定だけでなく、宇宙空間における共通私法を模索する動きも見られます。

主要な条約・原則

以下に主要な宇宙関連の条約と原則をまとめます。

条約

宇宙条約（月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約）
1966年12月19日採択、1967年10月10日発効。
宇宙活動における一般原則を規定。
宇宙救助返還協定（宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定）
1967年12月12日採択、1968年12月3日発効。
事故、遭難、緊急着陸の場合の宇宙飛行士の救助・送還、および物体の返還を定める。
宇宙条約5条・8条の規定を具体化したもの。
宇宙損害責任条約（宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約）
1971年11月29日採択、1972年9月1日発効。
宇宙物体による損害が発生した場合、物体の打ち上げ国は無限の無過失責任を負う。
宇宙条約6条・7条の規定を具体化したもの。
宇宙物体登録条約（宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約）
1974年11月12日採択、1976年9月15日発効。
宇宙物体の識別を目的とし、打ち上げ国は登録簿への記載、国連事務総長への情報提供が義務付けられる。
月協定（月その他の天体における国家活動を律する協定）
1979年12月14日採択、1984年7月11日発効。
天体の利用、開発には人類の共同遺産の原則が適用され、国家や私人の領有を明確に否定。
天体での活動における諸原則を再確認。
批准・署名国はごく少数にとどまっている。

原則（国連総会決議）

宇宙空間の探査と利用における国家活動を律する法原則に関する宣言 - 1963年採択
国際的な直接テレビジョン放送のための人工地球衛星の国家による使用を律する原則（DBS原則） - 1982年採択
リモートセンシング法原則宣言 - 1986年採択
* 宇宙空間における原子力電源の使用に関する原則 - 1992年採択

まとめ

宇宙法は、宇宙空間の平和利用と開発を促進するための重要な法体系です。国際的な協力と国内法の整備を通じて、宇宙活動の持続可能性と秩序ある発展を目指す必要があります。

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