宇宙服とは
宇宙服は
宇宙飛行士が
宇宙空間で安全に生存し、任務を遂行するために必須の装備です。この特殊な服は、
宇宙船内で使用する船内服と、船外活動時に使用する船外服の二つのタイプに大別されます。本記事では、主に船外活動用の宇宙服について詳述します。
宇宙服の機能
宇宙服には多くの重要な機能が求められています。以下はその主要な機能です:
1.
気密性と気圧調整:宇宙は真空状態であり、宇宙服は内部の気圧を適切に保つ必要があります。
2.
動きやすさ:気圧差により宇宙服は膨張しますが、これにより動きが制限されるため、工夫が必要です。
3.
呼吸支援:宇宙服は呼吸用の
酸素を供給し、
二酸化炭素を含む排気を循環させて再使用します。
4.
体温管理:
宇宙空間では低温ですが、強い
太陽光線や運動により体温が上がるため、冷却機能が不可欠です。
5.
防護機能:宇宙の環境に含まれる宇宙塵、デブリや
紫外線から
宇宙飛行士を保護します。
6.
通信機能:外部の環境と連絡を取るための通信装置が搭載されています。
船外活動は特に困難であり、宇宙服が膨張してしまうため、動き続けることが非常に難しいのです。1965年、ソビエト Unionのアレクセイ・レオーノフは、宇宙で初めて船外活動を行った際、宇宙服の膨張により困難な思いをしたと言われています。
船外活動ユニット (EMU)
アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発した船外活動ユニット(EMU)は、宇宙服本体、背負う生命維持システム、カメラや照明装置から構成されています。気圧は約0.3から0.4気圧(4.3psi)、重さは約120kgで、活動時間は約7時間です。この間、
宇宙飛行士は自由に動き回ることが求められます。
一方、
ロシアのオーラン宇宙服は約0.4気圧で作業性能には劣るものの、装着が容易であるという利点があります。この宇宙服は背中の扉を開いて入ることができ、一人でも着用可能です。
開発の歴史
宇宙服は長い歴史の中で進化してきました。1862年、気象学者のジェームズ・グレーシャーが高高度での人体の影響を初めて発見しました。その後、医師ポール・ベールが低圧チャンバーでの実験を行い、
酸素供給の重要性を証明しました。
宇宙服の原型とされる最初の与圧服は、
1931年にソ連のエヴゲニー・チェルトフスキーによって開発されました。そして、1965年にはアレクセイ・レオーノフがベールクト宇宙服を使用し、世界初の船外活動を行いました。
その後、アメリカでも宇宙服の開発が進められ、アポロ計画や
スペースシャトル用の宇宙服が作られました。特にEMUは
国際宇宙ステーション(ISS)での活動に向けて、各種の改良が施されています。
将来の宇宙服
NASAは、2025年頃に新たな宇宙服「探査船外活動移動ユニット(xEMU)」を採用する計画です。アポロ時代の宇宙服に比べて、柔軟性や遮熱性能が強化されるとされています。また、スぺースX社も新たな宇宙服を開発しており、2020年には初めて使用されました。これらの宇宙服は、今後の長期的な宇宙活動や、火星探査計画に向けても貢献することが期待されています。
宇宙服の現在と未来
宇宙服の開発には多くの技術的課題が残っている中、各国で競争が進んでいます。日本も独自の宇宙服の開発を検討しており、より軽量で機能的な装備を目指しています。
宇宙服は単なる服ではなく、宇宙の極限環境で人間が活動するための命綱です。その進化は、私たちの宇宙探査の未来にも大きな影響を与えることでしょう。