宇山厚

宇山厚：日本の外交官、波乱の時代を駆け抜けた生涯

宇山厚(1912年5月23日-2003年7月5日)は、20世紀後半の激動期を舞台に活躍した日本の外交官です。島根県出身の宇山は、東京帝国大学法学部政治学科卒業後、外務省に入省。サンフランシスコ日本政府在外事務所長、オーストラリア大使館参事官など、華々しいキャリアを積みました。その後、イギリス、イラン、インドといった国々の大使を歴任し、外交手腕を発揮しました。

特に注目すべきは、1972年の日本と台湾の断交という歴史的転換期における宇山氏の役割です。当時、駐中華民国特命全権大使として、複雑な外交交渉を担いました。この経験は、宇山氏の外交官としてのキャリアの中でも特に重要な転換点となりました。その後も、駐ブラジル特命全権大使として活躍し、ブラジル大統領夫妻の首席接伴員を務めるなど、その存在感は際立っていました。

外交官としての職務に加え、宇山氏は数々の要職を歴任しました。トヨタ自動車工業顧問、富士通顧問、東京基督教大学特別講師など、その活動は多岐に渡ります。また、東京松江会会長を務めるなど、地元への貢献も忘れませんでした。これらの活動は、宇山氏の幅広い知識と人脈、そして高い指導力を示しています。

宇山氏の出自も注目に値します。宇山家は、宇多源氏佐々木氏を祖とする名家です。従兄には、田部長右衛門元島根県知事がおり、その家系は地方政治にも大きな影響を与えてきました。また、妻の伊豆江は、矢田七太郎元駐スイス特命全権大使の三女であり、宇山氏の家庭環境も外交界と深く結びついていました。

晩年は、トヨタ自動車や富士通などの企業顧問を務め、後進の育成にも尽力しました。2003年、高血圧性心不全のため逝去。叙正三位。その生涯は、日本の外交史に大きな足跡を残すと共に、激動の時代を生き抜いた一人の人物像を示しています。

宇山氏の経歴を時系列でまとめると以下のようになります。

1912年：島根県に生まれる
1937年：東京帝国大学法学部政治学科卒業
1949年：外務省政務局経済課長
1950年：在サンフランシスコ日本政府在外事務所所長
1952年：外務省経済局第一課長
1959年：外務省アジア局兼大臣官房外務参事官
1962年：外務省アジア局賠償部長
1963年：在連合王国日本国大使館特命全権公使
1967年：駐イラン特命全権大使
1968年：初代在イラン日本国大使館付属日本人小学校校長
1969年：駐インド特命全権大使
1972年：駐中華民国特命全権大使（台湾断交時）
1973年：駐ブラジル特命全権大使
1976年：外務省顧問、エルネスト・ガイゼルブラジル大統領夫妻首席接伴員
1981年：日本ブータン友好協会幹事
2003年：逝去

宇山氏の著書

『最近の国際情勢について』(島根縣、1950年)
『最近のブラジル事情』(日本ブラジル中央協会、1976年)

宇山厚の生涯は、激動の時代を生き抜き、日本の外交史に貢献した一人の外交官の物語です。その功績は、日本の外交関係の進展に大きく貢献しただけでなく、後世への貴重な教訓を残しました。彼の経験と知見は、現代社会においても、国際関係を考える上で重要な示唆を与えてくれます。

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