宇目の唄げんか

宇目の唄げんか

「宇目の唄げんか」は、大分県南部の宇目町（現在の佐伯市）とその周辺地域に伝わる民謡です。この唄は、単なる子守唄ではなく、独特な特徴と歴史を持っています。

特徴

宇目の唄げんかの最大の特徴は、その歌詞が送りと返しの対話形式で構成されている点です。歌い手は二手に分かれ、互いに相手を揶揄したり、攻撃したりするような歌詞を歌い交わします。これは、子守唄としては非常に珍しい特徴であり、宇目町周辺地域では特にその攻撃性が顕著で、まるで喧嘩をしているかのように聞こえることから「唄げんか」と呼ばれています。

この唄は、即興形式で歌われることも多く、歌詞の選択や繰り返しは歌い手に委ねられています。そのため、地域や歌い手によって歌詞にバリエーションがあるのも特徴です。また、歌詞やメロディの一部には、熊本県の民謡「五木の子守唄」との共通性が見られます。興味深いことに、同様の唄げんかの風習は台湾にも存在しています。

歴史

宇目の唄げんかの起源は、近くの木浦鉱山に働きに出た夫婦のもとに、子守奉公として集められた娘たちの唄にあるとされています。子どもを背負った娘たちは、川岸などに集まり、二手に分かれて歌い合ったと言われています。当時の子守奉公は、肉体的にも精神的にも大きな負担を伴う仕事であり、そのストレスが攻撃的な歌詞を生み出したと考えられています。明治末期頃に子守奉公の風習が廃れるにつれて、この唄も歌われなくなっていきました。

しかし、第二次世界大戦後、大分県主催の民謡大会でこの唄が歌われたことをきっかけに、再び注目を集めるようになりました。地元の小学校教師であった安藤隆氏が、町内に住む高齢者たちから唄の聞き取り調査を行い、様々なバリエーションを収集しました。そして、1949年（昭和24年）には、奥宇目民俗保存会がこの唄を編曲し、1953年（昭和28年）にレコード化されたことで、全国的に知られるようになりました。

参考文献

朝日新聞西部本社編　『九州のうた100　-その風土とこころ-』　朝日ソノラマ、1982年、ISBN 4-257-05030-6
安藤隆　「宇目の唄げんか」　加藤数功、立石敏雄編　『祖母大崩山群』　しんつくし山岳会、1959年
日本放送協会編　『日本民謡大観　九州編（北部）』　日本放送出版協会、1977年

関連項目

唄げんか大橋
ラップバトル

外部リンク

宇目の歌げんか（NPO法人日本子守唄協会）

宇目の唄げんかは、単なる民謡としてだけでなく、当時の社会状況や人々の生活、感情を今に伝える貴重な文化遺産です。その独特な歌詞と旋律は、聴く人に強い印象を与えます。また、現代の音楽にも通じる要素を持っており、ラップバトルとの関連性も指摘されています。

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