木浦鉱山

木浦鉱山の概要

木浦鉱山は、大分県佐伯市（旧宇目町）に位置する、かつてスズや鉛などを産出した鉱山です。この鉱山は、地質学的に特異な特徴を持ち、また歴史的にも重要な役割を果たしました。

地質

木浦鉱山の地質は、秩父帯の石灰岩や粘板岩に、大崩山系の花崗岩が貫入した際に形成されたスカルン鉱床です。この鉱床は、スズ、鉛、亜[[鉛]]、ヒ素などを含む複合鉱物で構成されており、仏像構造線の一部である木浦衝上断層に沿って分布しています。鉱脈は石英を母体とし、磁硫鉄鉱、硫砒鉄鉱、黄鉄鉱、閃亜[[鉛]]鉱などの鉱物を含んでいます。また、西部にはコランダムや磁鉄鉱を含むエメリー鉱の鉱床も見られ、このエメリー鉱は研磨剤や舗装道路の骨材として利用されていました。日本では木浦鉱山のみで産出する貴重な資源です。

歴史

木浦鉱山の歴史は古く、その起源には諸説あります。記録によれば、1607年にはここで産出した鉛が将軍に献上されたとされています。江戸時代には岡藩の管轄下に置かれ、乙名や組頭と呼ばれる役人が管理していました。17世紀後半には最盛期を迎え、60もの鉱山で1000人もの労働者が働き、年間で2000斤のスズと4000斤の鉛を産出していました。当時、佐渡金山、石見銀山、生野銀山と並び、日本の四大銀山の一つと称されるほどでした。

しかし、当時の採掘は個人の山師に頼る部分が大きく、山師たちは藩から事業資金の前借や食料・燃料の供給を受ける必要があり、それらが負債となっていました。新たな鉱脈の発見が進まず、経営は不安定で、藩からの財政支援も度々行われましたが、山師たちのほとんどは負債を完済することができなかったと言われています。

明治時代に入ると、1873年に官営化されましたが、安価な輸入鉱石の影響で休山状態となりました。その後、1887年から三菱が経営を引き継ぎましたが、1894年には再び休業しました。第一次世界大戦後には亜ヒ酸の製造が行われました。1926年には東洋鉱山が設立され、1939年には554トンものスズを産出するまでになりましたが、1944年に発令された錫鉱業整備令によりスズ部門が休止となり、終戦とともに完全に休山となりました。

戦後、大分県鉱産物五カ年生産計画に基づいて再開発が試みられましたが、鉱石の品位が低く、1957年に中止されました。しかし、1961年にエメリー鉱の鉱床が発見されたことで、1967年から採掘が再開されました。この採掘も1999年に終了し、木浦鉱山の長い歴史は幕を閉じました。

関連情報

木浦鉱山は、その地質学的特徴から多くの学術研究の対象となってきました。また、日本の鉱業史において重要な役割を果たした鉱山として、その歴史は語り継がれています。関連する用語として、地球科学、火山、緑鉛鉱、真珠雲母などが挙げられます。

参考文献

大分県総務部総務課編　『大分県史　近世編1』　大分県、1983年
宇目町誌編纂委員会編　『宇目町誌』　宇目町、1991年

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